2016 Fiscal Year Research-status Report
地区社会福祉協議会活動推進における空き家活用型専有拠点に関する研究
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16K04152
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
中村 美安子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (30363857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 一興 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (10194268)
藤岡 泰寛 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (80322098)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 空き家情報 / 情報の集積点 / 空き家の条件 / 事務・会合・交流空間 / 司法書士 / 成年後見人 |
Outline of Annual Research Achievements |
住民による生活支援活動の活性化を図る上で求められる地区社協における空き家活用型専有拠点のあり方を検討するため、①「生活支援活動に取り組む地区社協の空き家活用型拠点に関する実態調査」(茅ケ崎市対象、現地訪問調査6カ所)、②「地域福祉推進基礎組織(注:地区社協を広くとらえた全社協定義の概念)の活動拠点調査」(活動拠点がある市町村社協922社協対象、郵送調査、回収率51.8%)、③「神奈川県内司法書士が管理する空き家に関する調査」(神奈川県内1130名対象、郵送調査、回収率27.2%)、以上3つの調査を実施した。①は研究実施計画で「生活支援活動に取り組む地区社協の空き家活用型拠点に関する実態調査」、②は平成30年度に実施予定であった「地区社協拠点と生活支援の展開に関する取り組みと意識に関する調査」③は平成29年度実施予定であった「物件情報把握に関する調査」に位置づく調査であり、②と③は前倒で実施することができた。 調査①では、生活支援活動に取り組むための活動拠点では、事務・会合・交流空間の確保が望ましく、事務と交流空間が重要であること、空き家の条件は、1階に日常使用する事務と交流空間、2~30人程度の会合ができる空間があること、室構成は、続き間等の連続する空間と可能なら事務空間は独立使用できること、活動者が高齢者中心であることへの配慮(イス座の選択等)の不可欠、移転の可能性があること、移転はリスクであり発展の契機でもあること等が示唆された。空き家活用が進むためには空き家情報の入手しやすさを確保する必要性があることが考察された。調査②では、空き家活用型拠点を持つ地区のある社協が58あること、調査③では、司法書士並びに成年後見人が情報集積点となりうること、賃料を要求しない家主が少なからず存在すること等が明らかとなった。空き家活用型専有拠点の確保を進めるための実践的な示唆に富む結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた「生活支援活動に取り組む地区社協の空き家活用型拠点に関する実態調査」(茅ケ崎市対象、現地訪問調査)が円滑に進み、そこで抽出された要素を全国レベルで検証するため、全国社会福祉協議会の協力を得て、平成30年に予定していた「地区社協拠点と生活支援の展開に関する取り組みと意識に関する調査」を「地域福祉推進基礎組織の活動拠点調査」(活動拠点がある市町村社協922社協対象、郵送調査)として前倒しして実施し、地区社協の活動拠点の実態把握と併せて空き家活用型専有拠点の所在と現況を把握することができた。当初は、茅ヶ崎市の現地訪問調査の結果を首都圏内の地区社協の空き家活用型活動拠点の現地訪問調査により検証しようと考えていたが、適合する事例の把握が困難であったことから平成30年度に予定していた市町村社協の全国調査を先行させ空き家活用型の事例把握を行った。その結果、58市町村社協に空き家活用型活動拠点があることがわかり、そのうち生活支援型活動を展開する地域が30弱程度あることが把握でき、今後の検証の見通しをたてることができた。 また、両調査により空き家活用においての課題点には、散在する空き家物件情報の集積点が不明であることが小さくない比重をしめることが確認されたことから、平成29年度に予定していた「物件情報把握に関する調査」を前倒しし、情報集積点としての可能性のある対象として、空き家管理に現に苦慮している不動産管理の専門職である司法書士(成年後見人含む)に対し、空き家管理の実態と意識調査を、日本司法書士会並びに神奈川県司法書士会の協力により、「神奈川県内司法書士が管理する空き家に関する調査」(神奈川県内1130名対象、郵送調査)として実施することができた。 当初の計画を一部修正しながら、当初の計画以上に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成28年度に実施した「地域福祉推進基礎組織の活動拠点調査」において空き家活用による活動拠点があると回答した市町村社協に対し、郵送による再調査を実施し、活動拠点の状況、成果、活用上の課題、空き家情報の入手先等についてさらに実態を把握し、地区社協における空き家活用型活動拠点確保の課題を整理する。また、このうち都市型地域で生活支援活動に取り組んでいる地域を抽出して現地調査を実施し、茅ヶ崎市の調査の結果を検証する。また、司法書士会への調査に続いて、空き家情報の集積点となっている可能性がある専門職成年後見人に対し同様の内容で郵送調査を実施し、情報の集積点の所在についてさらに明らかにする。これらについては、主に平成29年度実施を予定している、 平成30年度は、本研究の目的である、住民による生活支援活動の活性化を図る上で求められる地区社協における空き家活用型専有拠点のあり方を検討するため、調査結果をとりまとめた資料をもとに、市町村社協職員、地区社協活動者、建築関係者、行政関係者等による検討会を開催し、地区社協の空き家活用型専有拠点確保についての現実的な取り組み方策について検討、その成果をまとめ、学会報告、専門誌への情報掲載、関係機関への情報提供並びに問題提起を行う。
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Causes of Carryover |
「地域福祉推進基礎組織の活動拠点調査」(活動拠点がある市町村社協922社協対象郵送調査)について、調査票回収事務一式を業者委託と予定していたが、それを大学院生のアルバイトに変更できたこと、返送用封筒について分担研究者が所属する横浜国立大学建築学教室の準備分を使用できたことにより封筒代、印刷代が不要となったこと。「神奈川県内司法書士が管理する空き家に関する調査」について、発送・回収事務に関する委託料が、参考見積に比して実際には大幅におさえられたことによる。また、今年度予定していた茅ヶ崎市以外の地域の訪問調査では、図面作成等建築観点での調査を予定していたが、平成30年度に予定していた市町村社協への全国調査を先行させ当調査を平成29年度以降に実施と変更したことから、分担研究者分の使用額が今年度は大きくは発生しなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、1.平成28年度に実施した「地域福祉推進基礎組織の活動拠点調査」(回収数477)並びに「神奈川県内司法書士が管理する空き家に関する調査」(回収数307)の分析作業、2.「地域福祉推進基礎組織の活動拠点調査」で把握された空き家活用型活動拠点のある地域への再調査、3.2の調査のうち都市圏にある先行例に対する現地調査、4.専門職成年後見人に対する空き家情報の集積点に関する調査(郵送調査)以上4つに取り組む予定である。4の調査については、今後関係団体との調整を行い対象を絞るが、今のところ、社会福祉士会、弁護士会、行政書士会を予定している。 上記分析並びに調査費用を平成29年度分請求額と併せて使用する計画である。
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