2017 Fiscal Year Research-status Report
ベトナムのハンセン病村に住む子どもたちの自立支援と社会的統合
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16K04153
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Research Institution | Niigata College of Nursing |
Principal Investigator |
渡辺 弘之 新潟県立看護大学, 看護学部, 准教授 (10300097)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハンセン病 / ベトナム / 元患者の子どもたち / QOL |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムにおいて、偏見や差別、身体障害の発生などにより社会復帰が困難となったハンセン病元患者の場合、ハンセン病村などの施設がその定住先となり、元患者同士の婚姻によって子どもたちが誕生してきた。ハンセン病村で成長した元患者の子どもたちが一般社会との接点を持ち始める際、ハンセン病へのスティグマによってしばしば偏見や差別を受けることがある。本研究はハンセン病元患者の子どもたちのQOLを測定することで、子どもたちの精神的・身体的健康増進を高め、円滑な社会的統合支援実現のための基礎資料とすることを目的とする。 2017年、共同研究を行っているベトナムの医療機関において、ハンセン病元患者の子どもたちを対象にQOLの調査を実施した。身体的健康、精神的健康、自尊感情、家族、友だち、学校生活の下位尺度のうち、身体的健康の項目に有意差がみられ、元患者の子どもの場合一般群より身体的健康が有意に低いという結果となった。また有意差はみられなかったものの、両群とも精神的健康のスコアが低い傾向がみられた他、元患者の子どもの場合「友だち」と「学校生活」で極端に低いスコアを示す回答がみられた。ハンセン病元患者の子どもの場合、身体的健康の問題を抱えている他、友人関係や学校生活において葛藤を抱えている可能性が考えられることから、葛藤の原因となっている問題を把握し、元患者の子どものQOL向上に必要な方策の検討が必要である。この結果については、国際保健医療学会にて「ハンセン病元患者の親を持つ子どもたちのQOL評価-ベトナムでの事例より-」として報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分析に必要な件数を100件以上と見積もりデータ収集期間を3年間と予測していたが、2016年度、2017年度の2年間において必要なデータを収集することができた。しかし、近年ベトナムでは物価の上昇が著しく、2017年度には当初見積もった研究予算に不足が生じた。そのため科研費の前倒し請求によって不足分への対応を行ったが、分析に必要のデータは既に収集されているため、今年度における影響は少ないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
データ分析から得られた結果に基づいて、ハンセン病元患者の子どもたちの円滑な社会的統合を実現するためのプログラム素案づくりについて検討を行う。
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Causes of Carryover |
近年ベトナムでは物価の上昇が著しく、当初の研究計画を作成した3年前の研究予算見積もりとの間に隔たりが生じることとなった。そのため、2017年度には当初見積もった研究予算、特に人件費の支出においてに不足が生じた。この理由として、高い外国語能力を持つベトナム人に翻訳・データ起こしを依頼する際の単価が上昇したことが挙げられる。今年度現地調査を行うための予算に不足が生じる見込みであるが、今年とかデータの分析を中心に行い、出来る限り経費の削減に努めたい。
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