2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04154
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
輪倉 一広 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (10342122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハンセン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は学内業務が多忙だったため全く研究活動に取り組めなかった。本研究は1930年代におけるハンセン病救療事業家の実践について宗教福祉思想史研究の視座から検討するものであり、初年度である平成28年度には回春病院のハンナ・リデルについて、平成29年度には聖バルナバ・ミッションのコンウォール=リーについて専ら資料収集・分析を行ってきた。平成30年度は引き続き予定していた慰廃園のケート・ヤングマンと大塚正心・かね夫妻について史料調査・分析を進めなければならなかった。現在この慰廃園の流れをくむ好善社(東京)での現地調査とそれに基づく資料解析により、①ケート・ヤングマンと大塚正心・かね夫妻が対象者である患者たちとの間で構築した援助関係の構造とその神学的な意味の解明、②ケート・ヤングマンと大塚正心・かね夫妻の求める援助関係に対する患者たち(信者/未信者)のワーカビリティの解明、③ケート・ヤングマンと大塚正心・かね夫妻に特徴的にみられた救療思想・救療実践がもつ神学的な意味の解明、④援助関係と救済の場の変容過程の解明、という4つの課題から最も意義のある検討課題を確認し、抽出することで検討を進める予定であった。たとえば、とくに大塚正心・かね夫妻の救療実践で特徴的なものとして、政府委託患者と通常の入所患者との処遇上の違いの問題がある。なぜそうする必要があったのか、そうすることでどのような弊害がもたらされたのか等について具体的に検討をすることができたであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成30年度は学内業務が多忙だったため、全く研究に取り組めなかったため。本来であれば、第3年目の課題である慰廃園のケート・ヤングマンと大塚正心・かね夫妻について史料調査・分析を進めなければならなかった。併せて、第1年目に調査した回春病院のハンナ・リデルについて、また第2年目に調査した聖バルナバ・ミッションのコンウォール=リーについてさらに分析を加えて研究成果として発表することも望まれたが、平成29年度と30年度に思いがけず勤務校の学科長の責任をいただき、その業務に忙殺されて本研究に時間を割く余裕がなくなってしまった。それでも、ハンナ・リデルについての研究成果は現在、社会事業史学会の機関誌に掲載の方向で調整中であり、今年度内に発表できる目途を持っている。ただ、聖バルナバ・ミッションのコンウォール=リーについての詳細な分析はできておらず、研究成果の発表も今のところ予定が立っていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)は前年度に予定していた第3年目の課題に取り組む。以降は順に1年遅れで進め、最終的には当初の予定より1年延長する見込みで取り組んでいく。平成29年度から学内業務が多忙になり、29年度はとりあえず現地調査のみ優先して進めたが、平成30年度はそれも厳しいと判断し、研究を1年間中断した。その分は、全5年間の研究期間を1年後送りにして当初の課題を順次完遂していきたいと考えている。つまり、令和元年度は慰廃園のケート・ヤングマンと大塚正心・かね夫妻について史料調査・分析を進め、併せて第2年目に調査した聖バルナバ・ミッションのコンウォール=リーについてさらに分析を加えて研究成果として発表することを予定したい。ただ、平成29年度に予備的な調査で訪れた好善社には具体的な救療実践を示す資料がほとんど保存されていないことが分かっており、今年度の資料調査には新たな調査箇所についても検討が必要であることが見込まれている。
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Causes of Carryover |
学内業務が多忙だったため平成30年度の研究活動を取りやめた。したがって、今年度は前年度の割当額をそのまま平成31年度(令和元年度)分として使用したい。使用の使途は、慰廃園の運営母体である好善社(東京)で所蔵する同園関係の資料調査と関連文献の入手費用が主となろう。なお、それらを補うために大塚正心・かね夫妻関係の資料調査、好善社の第2代理事長であり慰廃園の運営に尽力した藤原駒次郎関係の資料調査を他所での所蔵を確認して進めたい。さらに他の好善社社員等の資料所蔵の可能性についても考慮し、主要文献である『ある群像―好善社100年の歩み』の内容を精査することで新たな調査先を探し出したい。
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