2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04154
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
輪倉 一広 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10342122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハンセン病 / コンウオール=リー / 聖バルナバ・ミッション / 患者コニュニティ / 公共性 / アングリカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
補助年度ごとに計4名のキリスト者であるハンセン病救療事業家の救らい実践の実際と思想を探るべく研究開始年の当初から現地での資料調査を行う計画で進めてきた。しかし、2018年度以降の学内業務の多忙化や新型コロナによる現地調査の中止により補助期間全体の計画が大きく狂うことになった。とりわけ2020年度は補助期間の最終年でありながらもコロナ禍により現地での資料調査以外についてもほとんど研究課題に取り組むことができず、結果、研究実績として何ら成果を公表することができなかった。 2019年度の当初予定であったコンウオール=リー(聖バルナバ・ミッション)の分のまとめについては「聖バルナバ・ミッションにおける救済と伝道の関係」(仮題)として2020年度において論文の執筆に取り組んでいる途中である。この論文では信徒=患者の主体性・自治性を伝道という向社会的な機会をとおして存分に発揮させることで患者コミュニティに生気を与え、結果的に他に類例を見ないほど患者の社会性において健全さを回復させたことについて検討するものである。 その際、とくに「公共性」の観点から検討する。それは、「公共性」が《公》の独占ではなく《私》の領域にもみられることから、リーの取り組んだハンセン病患者の救済事業である聖バルナバ・ミッションは私的公共圏の展開であったとみることができる。それはまた、リーの所属した英国国教会の教義であるアングリカニズムにあっては、とりわけ国民的な「伝統」を重視する傾向があることから、そうした経験知である「コモン・センス(commonn sense)」が聖バルナバ・ミッションという患者コミュニティにおいても「公共性」思想のもとで展開されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、本研究で2番目の研究対象となるコンウオール=リー(聖バルナバ・ミッション)についての資料分析および論文執筆を予定していたが、コロナ禍による予期せぬ混乱により計画がはかどらなかった。したがって、やり残した2020年度の課題は1年延長した2021年度に回すことにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は補助期間延長後の最終年度となるため、当初予定のほぼ半分以下しか計画を実施できずに終わることになるが、とにかく当初予定の2年目の計画すなわちコンウオール=リー(聖バルナバ・ミッション)についての研究成果の公表までは確実に行うことにしたい。現地での資料調査はコロナ禍が未だ終息を見せないことから2021年度においても行わず、おもにこれまでに収集した資料により研究を進めていくものとする。また、補助期間が終了しても本研究課題の残りの分については引き続き取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた資料調査をはじめとする研究活動が新型コロナ禍の混乱によってほとんど取り組めずに過ぎた。そのため補助期間を1年間延長し、2021年度まで本課題研究を続けることにした。2021年度にはその分の繰越額を充当することとなった。計画としては、引き続き厳しいコロナ禍の状況にあって資料収集のためのフィールドワークがためらわれるので、おもに補助の初年度を中心にこれまで収集した資料で分析検討していきたい。したがって、最終年である2021年度の助成金の使用は若干の消耗品や通信費程度の出費にとどまる予定である。
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