2016 Fiscal Year Research-status Report
介護保険事業者における人材評価指標を利用した人材養成プログラムに関する研究
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16K04156
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
東野 定律 静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (60419009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
筒井 孝子 兵庫県立大学, 経営研究科, 教授 (20300923)
大夛賀 政昭 国立保健医療科学院, その他部局等, 研究員 (90619115)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 介護人材 / 評価 / キャリア段位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、介護保険事業者における介護職員の労働環境改善に関する実証的研究と位置づけ、介護サービスを提供している介護職員の勤務実態と所属している事業所の状況や介護職員との関係を明らかにすることから、介護職員の勤務の継続性、良質なサービスを確保できる人材養成の方法について検討を行うことを目的とした。 本年度については、過去に行った静岡県内における事業所:特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホーム、通所介護事業所、訪問介護事業所、小規模多機能型居宅介護事業所に従事する勤続年数3年未満(新卒者除く)及び勤続年数10年以上の職員に対する質問紙を用いて収集した調査データの分析を行った。 業者が考える職員の就業意欲を向上するための取り組みで、最も多かった内容は、「定期的なミーティング等、職場内コミュニケーションの円滑化」が82.0%で最も取り組まれている割合が高く、次に「職場内研修の定期的実施」が71.0%と7割を超えていた。職場内のコミュニケーションや職場内の研修などを事業所として進めている部分はうかがえ、まだまだ課題を抱えている事業所が多いことが明らかになった。 就業意欲向上の取組に係る問題点としては、「就業意欲向上のための取組を行う時間がない」、「就業意欲向上のための取組に係るノウハウやシステムがない」、「就業意欲向上のための取組を実践できる人材がいない」などが挙げられたが、事業者の意見として、職員の就業意識を向上させるための時間も人も仕組みもないことが明らかになった。今後、実践キャリア・アップ戦略キャリア段位制度介護プロフェショナル」における評価基準を用いた調査で収集しているデータとマージすることから、各事業所の業務の実態について、その業務内容と質について把握する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内閣府が実施しているキャリア段位制度で評価されている項目や実際に提供しているサービス内容とその達成度に関するデータを収集については、当初予定していた平成28年度から平成29年度にわたり実施し、また昨年度静岡県社会福祉協議会が実施した福祉・介護人材実態調査で得られたデータと今回収集するデータの関係性を分析するため、すでに実施した福祉・介護人材実態調査で得られたデータと今回収集したデータをマージする作業を随時行っている。 なお、多くの事業所のデータを集めるために、キャリア段位制度の評価者講習などを現在実施している 一般社団法人シルバーサービス振興会の協力を得て、継続的に調査データを収集していく予定である。 一方、認知症に係わる生活機能障害への配慮を評価する介護技術項目の評価結果とこれら技術をうけた利用者の状態との関連性を詳細にすることを目的とし、キャリア段位制度の介護技術評価のフレームワークを活用し、開発された257の介護技術評価項目を用いて施設で収集された職員の提供した介護技術評価データを用いて、これら評価結果と技術を提供された利用者の状態像(医療処置や見当識障害の有無別等)との関連性を分析した。 認知症の対応に係る介護技術項目の統計的妥当性の検証を行うことができたと共に医療処置や見当識障害の有無別に選定された介護技術には違いを明らかにした。今後は、こうした知見をさらに精査し、事業利用者に対する介護技術の標準化に関する検討を行う必要があると考えられた。さらに、事業所が提供するサービスの質と職員の労働意欲や離職意向、事業所の人材養成の方法にどのような関係があるのかをさらに詳細な分析を行っていくことから、「提供されたサービス評価に基づく人材評価指標」の項目について検討している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、提供されたサービス評価に基づく人材評価指標を利用した研修プログラムの標準モデルの開発を目的とし、前年度に収集したデータを分析し、各施設の人材養成方法とその具体的な内容についての検討を行う。なお、実証 的なデータの統計的分析を進めると同時に社会福祉士、介護福祉士といった専門家による検討会を開催し、標準モデルを実施するための「サービス評価を基にした人材養成マニュアル」の内容について本年度から検討を行う予定である。 具体的には、前年度、実施した調査データをもとに、主に以下4点の内容に関して統計的な分析を進める。① 提供された介護技術と職員の属性(性別、経験年数等)に関する分析(全国の結果と比較)②提供された介護技 術の内容の施設間比較③事業所の属性と提供された介護技術の評価の関連性に関する分析④ 事業所の人材養成 内容と介護技術の評価の関連性に関する分析。また、これらの分析から得られたサービス評価に基づく人材評価の標準的な内容について具体的に示し、これらの結果を反映した人材養成マニュアル(案)を作成する予定である。 なお、この分析およびマニュアルの作成にあたっては、このモデルを活用することが期待される臨床現場において経験や知識が豊富な介護や看護の専門職らから意見を広く収集するための専門家委員会を設置し、その結果の解釈である分析や考察は、それぞれの専門領域からの視点で検討を行うものとする。 マニュアル作成にあたっては、医療や看護といった分野だけでなく人的サービスの人材評価および養成に関する先行研究を参照することはもとより、実際の介護現場の具体的な内容をより反映するため、これを活用することが期待される介護保険事業所職員をはじめ、老年学、社会福祉学、公衆衛生学、さらに高齢者介護の臨床現場 における経験や知識が豊富な専門職らから意見を広く収集する予定である。
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Research Products
(1 results)