2016 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者対象の介護職員養成プログラムのエンパワメント視点に基づく多角的評価研究
Project/Area Number |
16K04160
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
清水 由香 (丸山由香) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 助教 (90336793)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 精神障害者 / 就労支援 / エンパワメント / ホームヘルパー資格 / リカバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究目的:本研究の目的は、精神障害者対象のホームヘルパー等養成講座の評価に関して、質問紙調査を実施し、①学ぶことの意味、②就職活動の困難点と支援実情、③就労における困難点と支援ニーズ、④リカバリーと就労、学ぶことの意味、ピア活動の認識との関連を検討していくことである。また、面接調査から講座受講がどのように人生や生活に影響したのか探究することを研究全体の目的とした。 2 研究の方法:対象は、X自治体からA法人が平成16年~24年に受託実施した養成講座修了者335名。住所不明、死亡などを除き、272通の無記名自記式質問紙を郵送し、回収数は106通(回収率39.0%)であった。調査実施期間は、平成28年10月30日~翌年1月10日。質問紙の構成は、個人属性、講座受講の動機や受講の意味に関すること、ピアサポート活動経験、就職活動や就労状況、福祉関連資格の取得状況、リカバリー評価尺度などである。また、面接調査に関する依頼と説明文書を質問紙に同封し、質問紙とは別のハガキの返信で協力意思の回答をえた。発病の前後の生活の様子、講座受講の動機、資格取得後の生活や就労などを質問する半構造化面接を平成29年1月19日~実施し、18名のデータ収集を終え、継続収集していく。 3 結果・考察:個人特性は、男性53.8%、平均年齢が46.0歳、独居者が32.1%であった。精神疾患診断前の就労経験のある人が9割を占めており、ホームヘルパー資格取得が就労への動機として高い集団であることがわかる。資格取得後の就労経験者が74.5%で、就労者のうち、7割が介護・福祉系の就労であった。就労経験のある人が質問紙への回答動機が高く、就労経験者割合が高値になった可能性がある。講座受講の意味については、「学ぶことへの充実感があった」、「生活のはりあいになった」、「資格取得の達成感があった」が8割以上の人に該当した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は精神障害者対象のホームヘルパー養成等講座を受託し実施した法人との協力関係をもとに、予定していた質問紙調査の遂行と面接調査対象を募り、面接を実施するところまでを計画していた。養成講座の受託実施団体(法人)が2つあり、そのうち一つの法人は平成28年度に質問紙調査を実施できたものの、2つめの法人が関係する調査対象者の把握に時間がかった。14名と一つ目の法人に比べて少数であるが、年度末をまたいで調査することになってしまった。まずは、1つめの法人に関係する調査対象者分の質問紙の集計(106名分)を行い、基礎的な統計分析を行った。 また、面接調査は、18人実施しているが、翌年度も継続して進めていく予定である。研究協力者を調査対象者の中から募り、2回の研究協力者への研究の説明会開催を済ませている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、質問紙調査の詳細な分析を遂行する。特に①学ぶことの意味、②就職活動の困難点と支援環境とその活用状況、③就労における困難点と支援ニーズ、④リカバリーと就労、学ぶことの意味の認識との関連、という4つのテーマについて深めていく。 そして、質問紙回答者のうち、同意を得た人を対象に行っている個別インタビュー調査を継続して実施していく。申し出のあった人のなかには、体調不良や諸般の事業で面接協力が得られなくなった人もおられる。そのようななか、目標として30名のインタビューを実施していく予定である。また、面接結果をライフストーリーの視点から分析を行う。講座受講が人生、生活にどのような意味をもたらしたのかに焦点をあてて分析し、質問紙調査の結果と合わせて総合考察を行っていく。 さらに、本研究の特徴は、参加型リサーチ方式を採用し、結果や考察について、質問紙調査の回答者のうち、調査研究計画に同意を得て自由意思で研究協力者の申し出のあった人(22人)には、研究結果の共有を行い、当事者の立場から考察、提言を聞き取り、研究者と討論しながら、総合考察、提言をはかる方針である。
|