2017 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者対象の介護職員養成プログラムのエンパワメント視点に基づく多角的評価研究
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16K04160
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
清水 由香 (丸山由香) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 助教 (90336793)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 精神障害者 / ホームヘルパー / ピアヘルパー / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、精神障害者を対象にしたホームヘルパー資格取得講座の修了者が、講座受講をどのように認識し、就労やその後の生活に影響を受けているのか探究し、生活や人生の回復支援や就労支援の示唆を得ることである。平成28年度に実施した質問紙調査の分析をすすめた結果、1)講座受講の意味づけに関して、「資格取得による自信・意欲・希望の獲得」「自己理解と社会に関する学び」「学びがもたらす生活充実感」「仲間・相談者の獲得」の因子で構成され、「学びがもたらす生活充実感」が最も支持された。個人特性や就労経験との統計学的関連は認められず,多様な人に学びが生活の充実感をもたらす可能性が示唆された。2)資格取得後の就労面の困難感については、「職場の人的環境面の困難」「体力・体調管理の困難」「待遇面の困難」の因子が抽出され、なかでも「体力・体調管理の困難」が高かった。また、睡眠、休養、服薬管理など就労継続の生活の工夫の実践をより多くしているほど、就労継続期間が長い傾向があった。体力や体調管理のために、生活管理を実践できるような支援ニーズがあると示唆された。 第二次調査として、質問紙調査回答者のうち、面接調査の同意を得た24名に個人面接および、「講座受講での学びや得たこと」「就労」「ピアサポート」の3つのテーマで集団面接を実施した。講座受講の経緯や動機は、就労への期待が主であるが、通学することや受講者のなかに混じりながら自らに気づくことが回復や再起のプロセスになり、「学校」という場の機能が受講者に多面的影響を及ぼすことが示唆された。また、就労面については、職場の条件や自身の思いや特性との折り合いに悩みながら自らの生活を選択していた。また、講座受講が一つの人生の転機として位置づける人が多いが、さらに来年度以降、個人特性と人生経路の特徴を分類すること、および集団面接の3つのテーマの分析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に研究対象者の状況を量的に把握するための調査を実施し、その調査を起点として二次調査としてのインタビュー調査を初年度終盤から2年目に実施した。データ収集において概ね予定どおりに進展している。ただし量的調査の結果の概要は示すことができたが、詳細な統計分析の課題が残っている。また、インタビュー調査のおいて、24名の協力が得られ分析を進めているが、質的研究のプロセスにおける共同研究者によるピアレビューやスーパービジョンの機会を得ておらず、次年度に取り組み、結果の精緻化を図る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題についての推進方針は主に2つ。1つは量的、質的なデータの詳細な分析を進めていくことである。2つめは、結果の分析とあわせて、成果の発信である。成果の発信については、本研究が取り組んでいる課題は、精神障害をもちながらホームヘルパー資格を取得した人を最も数多く対象とした調査研究であり、その結果を分析、発信することにまず大きな意味をもつ研究である。その発信が、精神保健福祉に関わる専門家や研究者のみならず、当事者を励ますインパクトをもたらすと想定され、わかりやすく、普及しやすい発信内容と戦略をかんがえていく必要がある。一例として、成果報告の研究集会をオープンにして開催し、多くの専門家や精神障害のある人と討論できる機会をもつことを計画している。
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Research Products
(2 results)