2018 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者対象の介護職員養成プログラムのエンパワメント視点に基づく多角的評価研究
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16K04160
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
清水 由香 (丸山由香) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 助教 (90336793)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 精神障害者 / 就労支援 / リカバリー / ホームヘルパー / ピアサポート |
Outline of Annual Research Achievements |
精神障害のある人を対象にしたホームヘルパー養成講座を受講し、ホームヘルパー資格を取得した人々の生活面と就労に関する状況について、質問紙調査と面接調査を終えたあと、総合的な考察を深めるために、参加型リサーチの形式をとり、グループディスカッションを実施してきた。調査対象となった人が、対象という立場ではなく、自らの課題を研究者と共に考えていくなかで、研究者も当事者との意見交換から研究成果をより現実的な課題へと近づくことができる。まず、ホームヘルパー養成講座そのものあり方について探求した。1)講座を受託実施した団体の責任者のインタビューから、①本人の力や可能性を信じ、その力を引き出すように努めること、②働くことを通じて社会につながる生活へ、という信念からハローワークの協力を得てより就労につながる資源環境を形成した、③これまでの精神保健福祉の実践から、課題のある人を個人ではなくグループづくりにつなげて地域の課題解決や資源開発を行ってきた経験値から、グループワークを意図的に多用し、相互支援関係の構築を企図した、④精神保健福祉の制度や社会状況の理解を促し、自らのおかれた状況を客観視できるようにした。このような学びの機会の工夫が、修了後の受講者の意識を肯定的に変化させたと考える。 2)講座修了者の調査協力者とのグループワークから、①講座受講が自己への新たな気づきを促したこと、②就労の継続において、職場の上司・同僚とサポート活用が重要な要素となっていた。③講座受講により資格を得て、就労機会が拡がったことをステップに「一度精神病になって死んだ私が社会に復帰し生まれ変わった」、「元には戻れない。だから新しく生まれ変わるという感覚が合う」と言葉から「リボーン」がその後の生活を表す鍵概念として抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1点目は量的調査結果の分析について、就労状況や就労分野(介護福祉系か他職種か)と就労のサポートニーズとの関連、リカバリーの状況と就労状況やピアサポート実践との関連を深く分析する予定であったが、仮説と異なる結果であり、分析戦略を含めて再検討をしなければならない。2点目は、インタビューおよびグループインタビューの詳細の分析が遅れている。りょうてきなデータ分析が遅れていることもあり、次のインタビューデータの分析の遅れがある。研究協力を得ている調査対象者との協力関係を維持していきながら、分析を進めているところである。 3点目は、研究成果報告を学術論文で行うことを予定していたが、1点目、2点目の遅れから十分に到達できなかった。また、成果を関心の高い精神保健福祉に関する支援者やピアサポートなどに関心のある当事者らと共有するために、研究報告会の企画を行っているが、企画準備に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)研究協力者と共に、調査研究成果の報告をふまえて就労への道程と継続の方策について、シンポジウムを開催し、研究知見を介して参加者との意見交換を行う。リカバリ―概念と資格取得の前後の人生経験の語りを分析し、学びの効果について知見を得る。 2)調査研究結果の論文作成と報告を実施する。
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Causes of Carryover |
研究成果報告のシンポジウム開催を当該年度内に実施する予定であったが、準備が整わず、翌年度に持ち越してしまったことによる。シンポジウムでのシンポジストへの謝金、会場費、イベント企画にかかわる補助者への謝金、学会報告の旅費などで使用する。
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Research Products
(1 results)