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2016 Fiscal Year Research-status Report

女性支援現場の支援者が認識する女性の抑圧要素とジェンダー規範

Research Project

Project/Area Number 16K04161
Research InstitutionOsaka Prefecture University

Principal Investigator

児島 亜紀子  大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (40298401)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywordsジェンダー / ソーシャルワーク / フェミニズム / 抑圧 / 女性支援
Outline of Annual Research Achievements

今年度は、主として女性支援にかんする内外の先行研究を渉猟し吟味した。ことに本研究の問題関心の基底に据えられた「フェミニズムとソーシャルワーク」という問題系について整理を試みた結果、いくつかのことが明らかになった。ジェンダー、階級、人種といった、主体の抑圧あるいは周縁化をもたらす変数について分析したソーシャルワークの文献の多くがブラック・フェミニズムの影響を挙げており、「ジェンダーと人種」という分析枠組がソーシャルワークにも有用であることを指摘していた。その一方で、ソーシャルワークにおけるフェミニズムの影響は極めて限定的だとする見解もあった。McNay(1997)は、伝統的なソーシャルワークが依然として女性に「良い母親」であることを期待していることを指摘する。母親が「親業」をする能力を欠いていることを「問題」とするのが伝統的なソーシャルワークの立場であるのに対し、フェミニストのアプローチの「問題」把握はそれとは異なる。フェミニストのアプローチに求められているのは、個人の抑圧の経験を権力関係の理論に接続させるような理路であり、傷つけられやすく抑圧された諸集団の間の複雑な関係性を分析する力である。より最近のソーシャルワークアプローチであるクリティカル・ソーシャルワーク(たとえばFook 2002)においては、フェミニズムの影響は顕著であり、マルクス主義フェミニズム、差異派フェミニズムなど異なった立場のフェミニズム理論の摂取が見られた。わが国の女性支援・女性相談の文献においては、「ジェンダーの視点」という文言が多用されるものの、これが半ばマジックワード化しており、問題になっているのが性別役割分業なのか性規範なのか、イデオロギーなのか構造なのかが判然としないという傾向がみられた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

インタビュー調査を行うにあたり、まずもってソーシャルワーク研究においてフェミニズムの受容・摂取がどの程度まで進展しているのかを確認する必要があると考え、今年度は先行研究の吟味に力を入れた。それというのも、女性支援を行うソーシャルワーカーにインフォーマルに話を聞く機会があり、ジェンダー概念やフェミニズムについて話題にしたところ、施設では利用者に「良い母親」であることを望み、親業を遂行すべく方向づける支援が行われていること、ジェンダーやセクシュアリティといった女性支援の基本概念についてワーカー同士が話し合うことはないといったことが語られたためである。ここから、施設現場では伝統的なソーシャルワーク理論が支配的である可能性があると考えた。改めて内外の女性支援にかんするソーシャルワークの文献や、わが国の女性支援者の研修記録などを確認した次第である。

Strategy for Future Research Activity

今後さまざまな女性支援現場のうち、(ア)母子生活支援施設(イ)民間シェルター(ウ)単身女性に対し支援を行う「救護施設」(エ)DV被害者および売春のおそれのあるもののみならず広く「行き場なし」状態となった女性を支援する「婦人保護施設」の支援者たちに対するインタビュー調査を行う。上記施設の支援者によって行われている学習会に参加することにより利用者の事例検討をめぐって展開される支援者の言説実践のありようを検討する。インタビュー調査においては①施設での支援において、支援者たちは利用者の多様な生活様式をどのように理解しようと努めているのか、②支援者たちは利用者の直面する困難をどの程度ジェンダーと関わるものとして捉えているのか、あるいはいないのか、③支援者たちは利用者の置かれた困難が社会的・政治的な構造に起因するものとして把握しているか、あるいはいないのか、④利用者のおかれた状況において、支援者はジェンダーに起因する困難と、それ以外の抑圧要因とをどのように関連づけて支援計画を策定しているのか、⑤現行制度に内在しているジェンダー秩序を支援者たちはどのように捉えているのか、⑥差別される者として女性を保護する視点と、女性をエンパワーするという視点の違いを支援者たちはどのように捉えているのか、⑦支援者たちは自らに内面化されたジェンダー規範にどの程度自覚的であるか、⑧支援者自身の、そして利用者にも内面化されている可能性があるジェンダー規範を、支援者たちはどのように乗り越えようとしているのか、について検討する。

Causes of Carryover

業務多忙のため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

最終年度中には残額なくすみやかに執行する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017 2016

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 市配置の婦人相談員のDV被害者支援における役割-被害経験者に対するインタビュー調査をもとに2017

    • Author(s)
      岩本華子、増井香名子、山中京子、児島亜紀子
    • Journal Title

      社会問題研究

      Volume: 66 Pages: 53-64

    • Open Access
  • [Book] ソーシャルワークの倫理と価値2016

    • Author(s)
      サラ・バンクス著:石倉康次、児島亜紀子、伊藤文人監訳
    • Total Pages
      317
    • Publisher
      法律文化社

URL: 

Published: 2018-01-16  

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