2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K04165
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
大下 由美 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 准教授 (00382367)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ケア / 期待 / 差異 / ネットワーク / 四肢構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も理論的研究と実践的研究を継続し成果を上げた。理論的研究においての成果は、『コミュニティ臨床論ーケア実践と課題解決ネットワークの生成』として、九州大学出版会から上梓した。この著作では、新しいコミュニティ臨床論が示された。その特徴は、コミュニティ内で生じた問題の解決過程を、行為と期待の意味構成の差異化過程として論じ、要素の差異化を促す技法の体系的使用法、効果測定法を体系的に論じた点である。このコミュニティの生成論は、オリジナルなコミュニティ臨床論として、実践事例の有用性を明示する方法で示された。採用した実践事例は、地域の支援機関の多職種がチームを組んで、ネットワーク生成過程に取り組んだ事例である。そこでは、家族と専門職とのシステム、そしてそれを取り巻く近隣住民とのシステムにおいて、生じていた複数の問題を、ミクロな構成要素(期待の要素)の差異化から解決した過程を示した。 実践的研究においては、国内と国外と両方で取り組み、それぞれ成果を得た。国内においては、障害者分野(身体)および児童分野での困難事例に対し、ミクロレベルでの要素の差異化から、課題解決の規則を生成し、そのネットワーク化を図るという実践を試み、成果を得た。国外においては、理論的研究の成果を米国の研究者と共有する機会を持ち、共有した理論に基づき、臨床事例の分析を継続して行っている。既存の成功事例のまとめは、現在国際雑誌に投稿し、査読中である。現在進行中の他の事例については、評定論、変容論、介入過程の分析について議論を重ね、クライアントの問題を解決する実践に向けたカンファレンスを継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的研究においては、対人間での行為と期待、そして意味構成という基本的要素のネットワークモデルとして、コミュニティの生成論を体系的に論じ、国内出版という形で公開できたため。そして、国際レベルでの研究成果の公開についても、順調に進められているため。さらに、臨床的研究においても、国内外で進展がみられる。国内では、特に、障害分野、児童分野での研究が進んでいる。また米国研究者と、言語行為論を軸とした問題場面の評定論と介入論について、米国と日本で共有できる臨床モデルの構築に向けた議論が、臨床事例の考察を通して進められているため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年は、短期に問題解決を実現するネットワーク生成モデルの有用性について、国際レベルでの研究成果の公開に重点的に取り組む。その一方で、昨年度から取り組み始めた次の研究課題(言語行為論を軸とした支援モデル、効果的な差異化のための技法選択法の開発、および効果測定法の精緻化)についての研究を行う。
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Causes of Carryover |
次年度は、本研究の最終年度になるため、研究成果の国際レベルでの公開に重点的に取り組む。そのため、次年度への使用額は、英語論文の校正費として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)