2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の生活環境がアンチエイジングに及ぼす検証ー日独日本人高齢者の比較研究ー
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16K04166
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
三原 博光 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (10239337)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドイツ / 日本人高齢者 / 生活環境 / アンチエイジング / 健康 / 認知症予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は、2016年9月にドイツで老後を迎える日本人高齢者団体を訪問し、過去のアンチエイジングに関する質問紙調査の中間報告及び日本人高齢者の生活意識の個別面接を実施したことである。 1.質問紙調査報告 質問紙調査報告内容は次の通りである。①目的:厚生労働省が介護予防事業を目的に作成した基本チェックリストを用いて,ドイツ在住日本人と広島県在住の高齢者の比較を行なった。②調査対象者:ドイツ(リューベック,ハンブルグなど)に住む日本人58名と広島県(三次市,三原市)在住の高齢者40名の計98名60歳以上)を対象とした。③調査内容:質問紙調査。ドイツの調査対象者のみ実施した項目には,「日本に帰国する機会」「日本の事をよく思い出すか」「日本での納骨を希望するか」があり,広島県のみ実施した項目には「最後まで在宅を希望するか」があった。基本チェックリストの内容は日常生活活動,運動器機能,栄養,口腔機能,閉じこもり,認知機能であった。④調査結果・考察:栄養と物忘れの項目で異国の生活環境による有意差がみられ,ドイツ日本人高齢者は栄養が良好であるものの,認知機能の低下が著しかった。また,有意差は認められなかったものの,ドイツ在住日本人高齢者はうつ傾向が高いという特徴があることが分かった。さらに「老後を住み慣れた地域で迎えたい」という思いはドイツ,広島県ともに共通していた。 2.個別調査 個別面接では、ドイツにおける日常生活(食事、会話など)、健康状況、ドイツの老人ホーム入所などであった。3名の日本人女性と面接を実施できた。3名の女性(55歳~80歳)は国際結婚をしており、2名は既に配偶者を失っていた。3名とも認知症や病気の予防のために、日本食の料理、買い物、日本人との交流を行っていた。また、3名とも介護支援を必要とする日本人高齢者の日本語・日本食による在宅介護支援を行っていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ滞在の日本人対象の質問紙調査の実施は困難である。なぜならば、ドイツ在住日本人居住地が分散しており、集合調査の実施が困難であるからである。しかしかしながら、そのような困難な状況で、ドイツに住む日本人高齢者58名からの回答を得たことは大きな成果である。また、今後に調査協力の依頼を頂いているドイツ在住日本人高齢者団体もある。 個別面接は、主に3名に実施され、個別的にドイツで老後を迎える日常生活の困難さ、言葉・生活習慣の異なる異国・異文化のドイツにおける老後の大変さが示された。このように本研究の目的において、質問紙調査による統計的量的調査と個別面接の質的調査の両方の調査を実施できたことは意義深いと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年は、9月中旬にドイツ訪問を予定している。目的は、以下2つにある。 1つは国際結婚や仕事でドイツで老後を迎えようとする日本人男性を訪問し、個別面接する予定である。ドイツで老後を迎える日本人高齢者の9割は女性である。国際結婚の性別の割合は、日本人の女性が圧倒的に高い。そこで、今回は、ドイツで老後を考えている日本人男性に面接を行い、女性との性別による老後・健康意識の違いを調べる。個別面接は、シュットトガルト、ハイデルベルグ、リューベック市に住む日本人の男性(60歳~70歳)と実施の約束が行われている。 2つ目は、2018年9月にハイデルベルグ市において、ドイツの日本人高齢者団体、日本の医療福祉関係者(介護福祉士、看護師、医師など)と共同で「高齢者の生活環境がアンチエイジングに及ぼす検証」の国際研究集会の企画しており、その打ち合わせの訪問にある。この研究集会には、ミュンヘン、ハンブルグ、リューベックなどの各都市の日本人高齢者団体が参加を表明している。また、日本から保健医療福祉関係者(医師、看護師社会福祉士など)も参加し、異国で老後を迎える日本人の健康・介護問題について討議を行う予定である。 この2つの研究目的の実施により、高齢者の生活環境がアンチエイジングに及ぼす要因の幅広い検証とドイツの日本人高齢者団体の相互の協力、ドイツ日本領事館などの行政に介護支援を要望する機会を持つことになる。
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Causes of Carryover |
2016年度は、ドイツの日本人高齢者団体への過去の調査の中間報告(日常生活、健康、認知症予防など)訪問及び日本人高齢者への面接に対する謝礼が中心となり、当初、予定した物品などの使用が生じなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、2017年9月9日―18日にドイツ訪問し、老後を迎える日本人男性3名、在宅で介護支援を必要としている日本人女性(65歳)を訪問し、面接を行なう予定であり、これらの面接予定者に調査協力の謝礼を支払う予定である。また、ハイデルベルグ市で2018年、国際研究集会を企画しており、その打ち合わせを日本人関係者と行う予定であり、今回、生じた差額は十分使用が可能である。
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Research Products
(3 results)