2017 Fiscal Year Research-status Report
不登校児童生徒の早期発見・未然防止に向けたスクリーニングシートの開発
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16K04170
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
奥村 賢一 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (90584699)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不登校 / 児童 / 生徒 / 早期発見 / 未然防止 / スクリーニング / シート開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.具体的内容 1)文献研究(平成29年4月~平成30年3月)…論文、報告書、専門書を中心に先行研究を渉猟した。加えて、日本学校ソーシャルワーク学会や福岡県スクールソーシャルワーカー協会の研究大会などに参加して研究テーマに関連する最新情報の収集に努めた。2)現地調査…国内では福岡県内のA市、B市、C市の協力を得てアンケート及びヒアリング調査を実施した。併せて、台湾・新北市にあるスチューデントカウンセリングセンターの視察や国立台北大学でのスクールソーシャルワーカー国際交流セミナーの参加をとおして現地の関係者と情報交流を行った。 2.意義 A市では教育委員会と市内小中学校の担当者が参加しての不登校対策会議を年3回実施することができた。B市においては調査結果の分析に基づいたスクリーニングシート(案)が完成し、平成30年度から市内の中学校で試行的にスクリーニングシートを導入することが決まった。C市では要保護児童対策地域協議会と教育委員会の協力を得て調査を実施することができ、福祉と教育の効果的連携に向けた取り組みを進めることができた。平成29年度は各自治体の実情に応じてそれぞれ研究を進めることができたことが非常に有意義であった。 3.重要性 平成29年度は国内の調査研究に加えて、新たに日本と同じく不登校児童生徒の支援に取り組む台湾で現地調査を実施することができたことはスクリーニングシートの開発だけでなく、その後の運用の在り方を検討していくうえでも重要であった。特に①不登校の定義とシステムの活用、②校内フードバンク、③教育・福祉・心理の専門職によって編成されたセンター機能について調査ができたことは、残り一年となる本研究にとっても示唆に富むものであり、海外での先進的な取り組みを研究していくことの重要性を再確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国内での調査研究は引き続き順調に進展しており、福岡県内の3市において不登校児童生徒の実態調査を完了した。年間を通じてA市(7回)、B市(6回)、C市(4回)の研究会議を行いながら、調査の実施に向けた準備から結果内容のデータ分析に至るまで継続的に協議を重ねることができた。スクリーニングシート(案)まで完成した自治体もあり、学校現場での試行的取り組みを開始できるとこるまでたどり着いた。 また、本研究テーマに関連する台湾での取り組みを現地調査できたことで、スクリーニングシートの開発だけにとどまらず、それを効果的に運用していくための方法や校内体制の在り方についても考える機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成30年度は過去2年間で蓄積した研究の集大成として、福岡県内3市においてスクリーニングシートを完成させる予定である。これまで2年間実施してきた研究会議も継続して行いながら、各自治体の実態に即したシート作りを行うだけでなく、具体的な運用プロセスまで道筋を立てていきたい。 そのうえで、不登校という教育問題の背景にはさまざまな家庭生活上の福祉的課題が潜在していることがこれまでの調査で明らかとなったことから、学校現場だけでスクリーニングシートを使用するのではなく、教育と福祉の連携ツールとしても活用していくことができるよう改良していくことも検討している。そこで、台湾と同様に学校で教育と福祉の連携を促進するための機関としてParenting Centerがあるカナダ(トロント)への視察を行い、包括的な家族支援の取り組みについて新たな知見を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用額が生じた理由は以下の2点である。1点目は、研究会議への参加者及びアンケート調査の協力者の多くが公務員ということで謝金等を辞退されたことが挙げられる。2点目は、本研究が計画よりも早いペースで順調に進んでいることから、文献購入などで想定していた物品費の使用額が当初より少ない金額で収まったためである。 (使用計画) 平成30年度は考案したスクリーニングシートを実際に学校現場等で試行したものを検証していくことが中心になることから今のところ研究会議に要する費用以外に大きな支出は予定していない。そこで、台湾同様に学校でのソーシャルワークや子ども家庭福祉の先進地であるカナダ(トロント)に渡り、学校内にあるParenting Centerでの取り組みを視察するなどして、本研究で開発するスクリーニングシートの効果的な運用に向けた新たな知見を得たいと考えている。
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