2016 Fiscal Year Research-status Report
ボランティアの社会的経済的価値に関する研究-集団・組織レベルでの評価を中心に-
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16K04177
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
渡辺 裕子 駿河台大学, 経済経営学部, 教授 (10182958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南林 さえ子 駿河台大学, 経済経営学部, 教授 (80189224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ボランティア / 東日本大震災 / 被災地格差 / 災害ボランティア・NPOサポート募金 / ボランティアの経済的価値 / 社会生活基本調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究の目的:(1)平成24~26年度の科研費・基盤研究(C)において蓄積された中央共同募金会の「災害ボランティア・NPOサポート募金(以下、ボラサポ募金)」受給団体の活動状況データの更新を図るとともに、東日本大震災の災害ボランティアによって得られた経済的価値の評価を行う。(2)本研究課題の最終目標は集団・組織レベルでのボランティアの社会的経済的価値の測定にあるが、マクロデータとの接合の可能性も模索するため、マクロレベルでの測定をあわせて行う。 2.研究の方法:(1)「ボラサポ募金」受給団体の活動状況データべースは、第1回~第14回助成までを作成済みであるが、第18回(最終助成)まで更新するとともに、活動内容のコード化を行った。それにより、活動内容と助成額・その他の変数の関連を分析することが可能となった。(2)ボランティアのマクロレベルでの経済的価値を分析するために、「社会生活基本調査」の1996・2001・2006年度の匿名データを利用することとした。同データは変数・標本数ともに大規模であるため、ボランティア活動の分析に必要な変数を抽出し、変数ラベル・カテゴリーラベル・欠損値コードを検討する等、分析環境を整備する作業を行った。 3.研究の成果:(1)「ボラサポ募金」受給団体データベースは活動内容についても定量的な分析が可能となったため、基本的な課題として、ボランティア活動の被災地格差が生じた原因(活動内容の違いや被害規模等)について、11市町を取り上げて比較を行った。この成果は論文として発表した。(2)ボランティアの経済的価値の分析方法論について、国内外の文献整理を行った。また、「社会生活基本調査」の公表データを用いて、2001・2006・2011年度について、ボランティアの日本全体での経済的価値の算定を試みた。この成果は2017年度中に論文として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)「ボラサポ募金」受給団体の活動状況データべースの更新と分析:受給団体の活動状況は、中央共同募金会のホームページにより、受給決定時の採択団体一覧、及び活動報告書における情報を入手することができる。しかし、活動報告書は現在、詳細の部分が閉じられてしまい、概要しか閲覧できない状態になっている。その結果、第15回~第18回受給団体についてはデータベースの変数に欠損値が多く生じてしまい、分析の目的や方法を一部変更せざるを得なくなった。このような理由により、「ボラサポ募金」受給団体を用いた分析については、やや遅れが生じた。しかし、災害ボランティアの活動内容をコード化する作業を終えることができたため、これを用いた分析の可能性が広がった。 (2)「社会生活基本調査」におけるボランティア活動の分析:計画当初は平成29年度に実施する予定であったが、(1)の進捗状況にやや遅れが生じたため、逆に前倒しして平成28年度後半から着手した。現在は分析環境を整備する作業と小規模なテストサンプルを作成して試行的な分析を行っているが、社会生活基本調査の匿名データは生活行動編と生活時間編が別のデータファイルになっており、両ファイルを同一サンプルについて接合することがかなり困難であることが判明した。その結果、国際的な研究との比較という点から望まれる、団体の加入・非加入の活動形態別のボランティアの経済的価値の分析については、今後、単純化した仮定に基づく粗い算定にとどまらざるを得ないと考えられる。とはいえ、日本全体でのボランティアの経済的価値について、年齢層や就業の有無別の産出や活動分野別の算定額の大小等の、興味深い知見も多数得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「社会生活基本調査」におけるボランティア活動の分析:日本全体の時系列的な動きを確認すると、ボランティア行動率の低下や年齢階級別の行動率の差異がみられる。他方で、近年の子どもの貧困問題、頻繁に起こる災害などとの関連で、「子どもを対象とした活動」「災害に関係した活動」の行動率の上昇などがある。これらの諸問題について、団体への加入・非加入の活動団体別に行動や基本属性などとの関連を時系列的に分析する予定である。 (2)集団・組織レベルにおけるボランティアの社会的経済的価値の評価方法の開発:ボランティアの「経済的価値」に比べて、社会的便益やボランティア個人への効果等を含む「社会的経済的価値」については、研究が遅れている。これらの評価は容易ではないが、集団・組織レベルから開始することが、最も実行可能性が高いと考えられる。そこで、①これまでに蓄積させてきたボラサポ募金受給団体の情報、②会計学の領域での活動計算書におけるボランティアの役務評価、②1999年に提唱された新しい評価方法である社会的投資利益(SROI:Social Return on Investment)の枠組等を活用して、方法論の検討を行う。 (3)障害者系NPO・公益法人を対象とした予備的調査の実施:平成30年度に予定している社会的経済的価値の評価のためのインテンシブな事例調査に先立って、予備的調査を行う。調査対象候補のNPO・公益法人に関して、団体ホームページや刊行物等を利用した調査を行う。活動の社会的な便益やボランティア個人への効果等を推計するには、①受益者負担による事業収入が多い団体よりも、収入に占める寄付金や補助金・助成金の割合が高い、②有給の職員よりも、無給のボランティアに多くが担われている、等の条件を満たす団体を、適切に調査対象として選択する必要がある。そのため、本調査に先がけた予備的調査が重要である。
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Research Products
(1 results)