2017 Fiscal Year Research-status Report
自助集団のスピリチュアリティと土着の知の融合:通俗心理学の言説に対抗して
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16K04184
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡 知史 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50194329)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自助集団 / スピリチュアリティ / 土着の知 / 通俗心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
「自助集団のスピリチュアリティと土着の知の融合」を「通俗心理学の言説」との対比で考察していくことについて、2年目に入った段階でわかったことは以下のとおりである。通俗心理学の研究は非常に広範囲に進められていた。研究計画を作成した段階では、通俗心理学はかなり限定された言説として考えていたが、先行研究を調べているうちにわかったことは、自助集団に流れている言説は、心理的な事象に関することはすべて通俗心理学であると言っていいのではないかということである。従来、体験的知識が自助集団の基礎になっているということが定説であったが、通俗心理学の枠組みのなかでの自己の体験の再構成であるとすれば、自助集団が生み出す知識も、通俗心理学の枠を超えないことになってしまう。とすれば、社会を批判的に問い直すという自助集団の社会変革的な機能も期待できないことになってしまう。通俗心理学が覆っている範囲は大きく、そうではない「科学的」心理学は、ほとんど自助集団では使われていないし、使えるはずもないという状況が見えてきた。 一方の「スピリチュアリティと土着の知」であるが、それを抽出するのが難しいことがわかった。「スピリチュアリティや土着の知」といっても、葬儀等に関連する単に古い風習と理解されがちであった。「そこにスピリチュアリティがあるのか」「それは『知』と言うにふさわしい内容をもつのか」という根源的な問いも出てきた。インタビューで問おうとしてもそれを問う意義や意味が、インタビュー対象者に伝わらないため内容が深まらない。 要するに研究の遂行2年目で見えてきたことは、スピリチュアリティ、土着の知、通俗心理学という三者は、単なる惰性的な習慣や(自助集団内に限定されない)日常的な思考と峻別されない形で渾然一体となって存在することであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の論理の基礎になる概念について、先行研究を進めているうちに、その概念が覆う範囲が予想以上に広いことがわかったこと。また参与観察やインタビューからのデータの収集に工夫が必要であることがわかってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに集めた文書の分析を含め、データの収集方法を工夫しながら、インタビューや参与観察を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
インタビューが遅れていたり、またインタビューが終わったものの、その反訳のための手続が終わっていないため。今後は、インタビューを進め、また反訳の手続を迅速に進めたい。
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