2017 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半の東アジア社会福祉の学術交流史に関する研究及び研究方法論の構築
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16K04196
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
沈 潔 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (20305808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
趙 軍 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (30301831)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学術交流史 / 満洲生活 / 社会政策 / 社会事業 / 日本と中国 / 史料批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017 年度の研究課題において、20世紀前半に出版された該当領域の日本語及び中国語の書籍や雑誌に照らしながら史料批判作業を行い、社会福祉領域における学術交流のアプローチ及び史実を検証した。また、以上の作業を通じて、20世紀前半における東アジア社会福祉学術交流史に関する研究視点や研究手法なども検討した。 具体的には、下記の活動を実施した。 Ⅰ 少人数によるワークショップの開催、研究方法についての検討である。2017年11月18日「社会政策史の日中研究の動向と手法について」をテーマにして、中国・湖南師範大学1名、中国・鄭州大学3名の研究者を迎え、日本女子大学目白校舎でワークショップを開催した。 Ⅱ 史料批判に関する中間研究成果の発表である。1)2017年11月3-4日 南開大学で中国社会政策専門委員会が開催するシンポジウムに参加し、沈潔は「中国社会政策本土化の経路探索:1930年代を中心に」について発表した。2)2017年12月1-4日 台湾中央研究院近代史研究所が主催する「西方經驗與近代中日交流的思想連鎖」国際会議に参加し、沈潔は「中國社會政策萌芽期的日本因素」について学会報告を行った。趙軍は「遠藤隆吉と中国――ある昭和漢学者・社会学者の思想と方法」について学会報告を行った。 Ⅲ 研究成果の一環として、研究代表者及び分担者らが『写真記録「満洲」生活の記憶』の資料集(全6巻+別冊1巻)を監修・解説し、近現代資料刊行会により出版することができた。Ⅳ オーラルリサーチの実施である。北京大学歴史学科教授W氏、韓国社会事業史学会 氏の三人に対してオーラルリサーチ調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定された本年度の達成目標は、おおむね順調に進捗している。初年度の研究成果を踏まえ、今年度では、発掘された中国語及び日本語の資料に照らしながら史料検証及び史料批判の作業を行い、2名のスペシャリストに対して、オーラルリサーチを行った。以上のプロセスを通じて、20世紀前半における日本と中国の間に行き来する社会福祉の学術交流及び政策移転の概況について、解明することができた。特に日本の社会事業や社会政策分野を代表する学者の生江孝之、海野幸徳、小河滋次郎らの学説や理論は、日本に留学し中国に帰国した留学生らの努力によって、中国に伝播し、教育及び政策策定の場において、生かされた史実を解明することができた。よって、本課題の仮説である専門家の中立性、政策移転の共益性の視点を、以上の史料分析によって立証できたことが大きな成果である。 また、20世紀前半において「満洲」地域で生活している日本人、中国人、朝鮮人の生活を記録した4000枚以上の写真を歴史の記憶として編纂し、刊行したことも今年度の研究成果の一つである。生活を記録したビジュアル的資料に映された歴史上の社会福祉の「虚像」と「実像」をどのような視点で検証すべきか、その方法論の模索に関して有益な試みを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、以上の研究結果を踏まえ、認識の理論的枠組みや、それに相応しい研究方法を明らかにする予定である。また、今後の東アジア社会福祉学術の連携のあり方や共通の理論的基盤と価値観を究明することに努めたい。そして、研究報告書をまとめ、研究成果を公表し、社会に還元する予定である。 具体的には、下記の活動を実施する計画である。 Ⅰ 2018 年5月に日本社会事業史学会の年度大会において、関連する研究成果を発表する。Ⅱ 2018 年11月に海外の研究協力者を日本に招聘し、シンポジウム(国際会議)を開催する。現実的な課題の対応として、東アジア社会福祉研究分野の学者らとの交流の原則、組織間の連携と協働、政策の移転と評価について、その具体策を検討する。Ⅲ 以上の作業によって明らかにされた知見は共通性のある東アジア福祉政策の構築に当たって、その共通の理論的基盤と価値観を明確にしたうえで、研究報告書をまとめる。
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Causes of Carryover |
理由:次年度に海外の研究協力者を日本に招聘し、小規模な国際会議を行うことを予定している。生じた次年度の使用額は、そのための国際旅費や国際会議に充当したい。 使用計画:(1)小規模な国際会議のシンポジストの旅費、謝礼、(2)国際会議開催するための人件費や会議費、(3)研究報告書の印刷費として、などの使途に使用する予定である。
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