2017 Fiscal Year Research-status Report
限界集落の地域生活継続可能性と地域住民のエンパワメント評価に関する縦断的研究
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16K04198
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
渡辺 裕一 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (70412921)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域住民のパワー / 社会的孤立 / 他者からの支援期待 |
Outline of Annual Research Achievements |
限界集落化後の地域での生活継続において、フォーマル・インフォーマルのサポート源にかかわらず他者からの支援を期待することは必要不可欠である。地域住民としてのパワーが低下した状態において、社会的排除感を持ちやすい可能性についてすでに明らかにしているが、今年度は、新たに社会的孤立の測定指標を加えて調査を実施し、高齢期における社会的な孤立の程度と自分自身が何らかのケアを必要とした場合の他者からのサポート期待の関連を明らかにした。 分析の対象を65歳以上の地域住民とし、社会的孤立の程度を「他者とかかわる回数」、他者への支援期待を「集落の内外に居住している家族もしくは親せき、友人、フォーマルサービスそれぞれからの支援を期待できるか」によって測定した。 分析の結果、社会的孤立の程度と集落内外に居住する「家族もしくは親せき」「友人」への支援期待に有意な関連が認められた。 社会的な孤立が、集落内で生活する上で集落内外からのインフォーマルな支援を期待しにくい状況につながっている可能性が示唆されている。フォーマルサービスへの支援期待には社会的孤立の状況との有意な関連は認められなかったものの、限界集落において「フォーマルサービスに期待できる」という状態ではない。社会的な孤立の状況が支援期待に影響を与えていることから、人とのつながりが多いか少ないかが集落での生活継続に格差を生んでいることが考えられる。また、社会的な孤立の状況が、集落での生活継続のリスクになる可能性が示唆されたといえる。 ※本内容は、「Relationship between social isolation and support expectation in the elderly in the marginal community」と題して、IAGG/GSA2017にて報告したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画において、予定したデータ及び関連するデータの収集が進んでいることから、「おおむね順調に進展している」ととらえた。一方で、データの分析と成果の報告については、いくらか課題があると感じている。研究計画における目的に沿って分析を進め、成果の報告に向けてより一層努力していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策について、これまでおおむね順調にデータの収集を行ってきており、平成30年度も計画に沿って質問紙による調査を実施する予定である。なお、平成29年度に、高齢者の生活状況の現状について、約20名の高齢のひとり暮らし及び夫婦のみ世帯への半構造化面接によるインタビュー調査を実施した。これらをまとめ、分析するとともに、継続して実施している調査の質問項目の見直しを進めたい。
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Causes of Carryover |
当該年度においては、研究計画通りの支出額となっている。平成28年度より繰り越した額の多くを、平成30年度に予定している質問紙による量的調査の実施に経費を要するため、再度繰り越しする判断をした。
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