2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04204
|
Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
山本 真実 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 教授 (20337695)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 社会的責任 / 社会的共同親 / 子どもの最善の利益 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、イギリスにおけるcorporate parenting(社会的共同親)の概念の発展についての整理及び現在の政策との関連性について文献調査及び現地資料による分析を行った。corporate parenting(社会的共同親)の概念は、イギリスにおける児童福祉政策において、社会的養護施策を中心に前提とされる理念・概念であり、本研究テーマの「社会的責任」意識を醸成するための方策を検討する際に多くの示唆を含んでいることが明らかになった。本研究の「社会的責任」意識は、国及び地方自治体、保育事業者、保護者(利用者)の三者が共通に意識し、遵守すべき自律的意識に基づく責任感であるが、イギリスのcorporate parenting(社会的共同親)も対象の子どもの処遇や措置を行う場合、常に「自分の子どもだったら」と考えることによって、保育・養護の質を向上し、子どもの最善の利益を保障するために役立っている。特に、サービス(事業)提供・実施が民間事業者となり、経済市場の中での運営を成立させていく方向の施策の場合は、この自律的意識が「社会的責任」を果たすためには不可欠であろう。イギリスの場合、地方議員を含む行政機関や施設、NPO団体等の担い手が共通して踏まえるべきものとしてガイドラインが出され、法律にも明記されている。このことは、イギリスがprotection概念からsafeguard概念を児童福祉政策の中心理念と移行させてきた中で大事な役割を果たしているといえる。予防やリスク対応を中心とした保護施策は、事後処理型のprotection概念と異なり、実際の事件や事象が発生しない状態で機能しなければならないため、基準に違反していない最低ラインになりやすい。そのため、社会的責任意識の醸成にはcorporate parentingのような共通意識を形成する指針が多いに役立つといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度秋に研究成果を発表するため、研究期間を1年延長したが、概ね順調に推移している。
|
Strategy for Future Research Activity |
延長した期間で、イギリスのcorporate parentingと同様の概念を保育・養護等の児童福祉サービスにおけう概念の構築に向けて、責任の配分のあり方について研究を進め、最終的にまとめていきたい。そのため、保育・教育施設で発生した保育事故に着目し、その検証報告書や裁判訴訟の判例を参考に、国及び地方自治体、保育事業者、保護者の三者の責任の配分は、日本ではどのように認識されているのか、そして今後のあり方について検討する。
|
Causes of Carryover |
研究成果発表の一部である書籍の出版が2019年度にずれ込んでしまったこと、またその成果を含めて学会発表及び論文執筆を行う必要が生じたため。
|
Research Products
(1 results)