2017 Fiscal Year Research-status Report
障害者権利条約に照らした意思決定及び社会的包摂を通じた福祉国家レジームの検討
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16K04205
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
引馬 知子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 教授 (00267311)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会的包摂(ソーシャルインクルージョン) / 意思決定支援 / 障害者権利条約 / 福祉国家 / 全員参加型社会 / 共生社会 / 生活構造の把握 / ワークライフバランス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の日本国内における文献研究をもとに、研究計画に沿って、本研究の比較対象国の一つである英国の関係機関や大学、および、ベルギーにおける主にEU及び加盟国に関係する諸機関やNGO、大学を訪問し、調査研究を行った。内容は、障害者権利条約に照らした意思決定支援及び社会的包摂、これらに関わる均等待遇、アクセシビリティ、社会サービスの具体的な項目における各国の状況についてである。 さらに同分野の欧州の専門家、政策担当者、活動家との意見交換を実施するとともに、関連するテーマの会議で、政策の方向性、当事者を主体にみた現状と課題、これらにおける欧州の福祉国家間の相違やモデルとの関わりを把握した。同分野の最新の研究動向と実際の課題を確認し、研究テーマにおいて、さらに次年度に向けて分析すべき統計やデータの所在、訪問すべき機関、研究者、実践家、政策関係者等が明らかになった。 これらの調査研究に並行して、研究の理論面における生活構造の把握について、文献研究を継続した。そのなかで、障害の有無や特性などに関わり、どこまで具体的な先行調査や統計、およびこれらの分析があるのか、どのような点で独自の分析が必要となるのかが相当程度、明確になった。また、今年度は「生活の質」について検討する欧州の新たな文献を、特に関連機関や会議等を通じて収集し、本テーマの視点からこれらの内容について整理することを試みた。 以上の成果を踏まえて、それぞれの内容を包括的に繋げ、福祉国家レジームと障害の有無に拠らない人の包摂を検討する視点を精査した。 本年度の後半に、教員研修の機関を得て欧州に滞在したことから、本研究に使用した経費については次年度に清算することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画に沿った当該研究を、文献研究及び調査研究ともに進めることができた。国外の複数の研究連携者と協力し、国連の障害者権利条約における意思決定と社会的包摂、社会サービスに関わる部分の履行に焦点をあて、EU加盟国(欧州の福祉国家)やEUの現状を把握することができた。さらに、これらが当事者の生活や労働にどのように関わっているかについて、関連する文献や実際の議論を収集し検討することが可能となった。これは、欧州の専門家会議や社会サービス事業者の会議などに出席する機会を得たことにもよる。 くわえて、EUの関係部署や障害分野の統計やデータ分析を行う組織等において、質問紙を用いた聞き取りを実施したり、意見交換を行った。当該研究にあたり、分析の方法や、どのような点の統計や資料がさらに必要となるかについても把握することができた。 福祉国家の比較を行うにあたり、一定の基準のもとに、英国、スウェーデン、オランダほか、特徴的な国々の抽出が一定程度できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究の成果を踏まえて、今後は、①さらに研究を深めるために必要であるとして紹介された機関や関係者への訪問調査とその結果の分析、②生活の質と労働、これらを繋げる社会サービスに関わる包括的な分析と社会的意義の検討、③これまでの分析結果を横断的につなげる検討、④具体的な項目の福祉国家の比較とその下での成果の整理を行うことを進める。 並行して、当事者の置かれた状況や当事者に対する意思決定支援の諸制度の検討し、最終的に、双方を繋げつつ、その内容を国連の障害者権利条約に照らすこととする。あわせて、研究テーマの枠組みとしての理論研究を深め、調査及び文献研究の成果と理論をつなげ、まとめを導いていく。
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Causes of Carryover |
次年度に繰り越される本年度の額の全てを、すでに今年度の研究遂行で使用している。今年度後期に日本国内の所属研究機関を離れ、欧州で本研究を遂行する機会を得たため、すでに本年度使用した経費の支出が次年度に持ち越されることとなった。次年度は、当初の計画にそった次年度の予算を使用する予定である。
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