2016 Fiscal Year Research-status Report
DV被害を受けた外国人女性とその子どもへの多文化ソーシャルワーク実践モデルの構築
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16K04206
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
寺田 貴美代 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (70352680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドメスティック・バイオレンス / DV / 被害者支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」において、被害者の国籍を問わず人権を尊重することが示され、DVの直接的被害者への支援体制については整いつつある。また、「児童虐待の防止等に関する法律」において、DVの目撃も児童虐待であることが明記されたように、家庭内でDVに晒されることによる子どもたちへの被害に対し、社会的理解が広まりつつある。 しかしながら、DVによる母子関係への影響については、未だ明らかになっているとは言い難く、その支援も、しばしば関係機関や関係者による個別的努力に委ねられているのが現状である。 そこで平成28年度においては、外国人女性のDV被害の背景と特徴をまとめた上で、実際に展開されているDV被害者支援に関するソーシャルワーク・アプローチについてまとめ、現状の支援展開の問題と課題を明確化した。その上で、効果的な支援のあり方について考察を行った。 その結果、長期的・包括的な視座から、高度な専門性に基づくソーシャルワークの展開を可能にするには、民間機関への財政的支援の充実や公的機関による支援内容の拡充が必要であり、また、一部の自治体で実施されている先駆的な取り組みの成果を踏まえ、公的機関と民間機関との一層の連携促進および社会的資源の活用による包括的な支援体制の整備が不可欠であることを明らかにした。さらに、DV被害者である外国人女性やその子どもたちへの支援には、地域社会が一体となってDVを容認しない社会を形成することが重要であるため、その実現のための具体的な方策を検討することが今後の課題であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題、「DV被害を受けた外国人女性とその子どもへの多文化ソーシャルワーク実践モデルの構築」は、平成28年4月から開始した研究であり、その後、現時点までの1年間において、本研究の調査協力団体の事情により、研究計画の一部を次年度に順延する必要性が生じたものの、全体としては大幅に支障をきたすような問題は生じていない。また、調査協力団体からは、引き続き研究協力の了承を得らていることから、当初の研究計画書に記載した予定と、おおむね一致して研究を遂行していると理解している。したがって、本欄、「現在までの本研究課題の進捗状況」に関しては、「おおむね順調に進展している」という区分が適切であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、DV被害者支援の現状と課題を把握した上で、DV被害者支援に関するソーシャルワークを中心にまとめ、現状の支援展開の問題と課題を明確化した。この研究の進展に伴い、DV対策においては、ソーシャルワーカーが専門的な役割を果たすことが期待されており、被害者個人への直接的支援のみならず、ソーシャルワーク・アプローチの活用によって社会福祉施設等の支援機関と地域社会の関係機関が連携を図り、被害者を多面的に支援する体制を早急に確立することが急務の課題となっていることが明らかとなった。 そこで今後は、DV被害者支援に関する直接的なソーシャルワーク理論以外にも、ファミリー・ソーシャルワークや、コミュニティ・ソーシャルワークなど多様なアプローチを活用することにより、当事者である被害者-加害者間の関係のみならず、文化的・社会的な背景を深く理解し、個人と社会環境の連続性に留意した支援体制の構築するための方策について検討したいと考えている。それにより、コミュニティや社会的ネットワークへのアプローチを含む、包括的支援を可能にするための方策について明らかにすることを計画している。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、本研究の調査協力団体である母子生活支援施設と連携し、調査研究を進める計画であった。しかしながら、同団体の施設設備における改修が、資材費の高騰などの影響により当初の施設整備計画より遅れた。そのため、母子生活支援施設の運営上、本研究において同団体の関係する研究計画の一部については、次年度へ延期する必要性が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、改めて、本研究の調査協力団体である母子生活支援施設と連携して調査研究をすすめる計画である。したがって、研究費の未使用額については、調査計画上、平成28年度に一部延期せざるをえなかった調査研究の遂行および分析のための経費に充てることにしたいと考える。
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Research Products
(1 results)