2016 Fiscal Year Research-status Report
子ども虐待防止に有効な施策と支援は何か-社会指標と自治体死亡事例検証の分析から-
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16K04207
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
鈴木 昭 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (30401756)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
春木 邦子 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 助教 (40567434) [Withdrawn]
丸田 秋男 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (60339968)
武井 恒美 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 特任教授 (70740108)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子ども虐待 / 自治体死亡検証報告書 / 社会指標 / 子ども家庭福祉 / エビデンス / 危機理論 / ソーシャルサポート |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は、1子ども家庭福祉をめぐる社会指標の分析をとおして子ども虐待防止に効果のある施策を抽出し提起する、2自治体死亡事例検証報告書をもとに子ども虐待問題の改善に有効な支援対応について析出する、という2分野からなる。子ども虐待防止に有効な施策と支援は何か、を明らかにすることは増大し続ける子ども虐待を減じる契機になる。 平成28年度はこのうち、1子ども家庭福祉をめぐる社会指標については、都道府県ごとに人口密度、人口動態、保健、福祉、医療等について子ども虐待対応件数との関連について予備的研究を進め、人口密度、教育扶助(生活保護)等と相関していることを確認している。平成29年度本研究に着手する。また平成28年度は、2自治体死亡事例等検証作業(報告書)を手掛かりに都道府県(47)、政令市(20)における子ども虐待問題に対する取り組みについて全国郵送調査を終了し、結果の一部を自治体宛、公表還元した。その主な結果は以下のとおりである。 回収率は58.2%、39/67自治体。都道府県26、政令市13自治体であった。このうち、平成17年4月からの10年間における死亡検証作業を実施した実自治体が34、延べ検証回数は107回に及び最大11回であった。検証で指摘された問題点・課題では、関係機関の連携、情報収集安全の確保、提言では関係機関同士の連携強化、初期段階の情報収集安全確認、職員の専門性の確保、事後の取組では、機関連携、職員の専門性の確保、保護支援介入を挙げた自治体が多かった。また、死亡検証報告書は自治体により差異があり、活用されていないとする回答も多く、検証作業の課題が明らかになった。 子ども虐待相談伸び率では、政令市、都道府県で差がみられた(p=0.03<0.05)。児童人口千対子ども虐待率は、児童相談総数と正の相関を示し、児童人口とは負の相関がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は以下の計画に従って実施している。 1 子ども虐待に関する基礎統計(福祉行政報告例)、②保健医療福祉施策を中心に社会 指標を用いて、子ども虐待防止に関連する総合的指標と有効な施策を抽出する。2 自治体子ども虐待死亡検証報告書(n=132)をもとに援助過程を分析し、子ども虐待の防止拡大に有効な援助法を析出する。 このうち、平成28年度中1については、指標の選定等予備研究を終えている。2については、(1)子ども虐待による死亡検証作業の検証(全国自治体調査)を終え、(2)危機理論とソーシャルサポート論を援用した子ども虐待の深化拡大過程、援助過程・支援内容の分析についても、自治体により公表された子ども虐待による死亡検証報告書(n=132)の評定作業を終え、データクリーニング中の状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクロ、マクロ両様の視点からのこれまでの研究結果を踏まえ、子ども虐待防止の取り組において特徴のある自治体現場に出向き現地補足調査を29年度中に実施する。さらに1子ども虐待防止に関連する総合的な社会的指標を作成し、有効な施策を提起するとともに子ども虐待の機制と深化拡大過程を明らかにし、平成30年に有効な援助過程・支援内容を可視化する。 省庁横断的な観点から社会指標を収集選定し多変量解析の手法により、子ども虐待防止に効果的な施策を提起することは、福祉にとどまらず住みやすいまちづくりそのものにつながる。さらに危機理論とソーシャルサポート論を援用した子ども虐待過程の研究から得られる知見は、人々の孤立感の解消と相談の包括化を担う人材育成に役立ち、地域における子ども虐待の支援対応力を高め新しい子ども家庭福祉の展開に資するものと考える。 これらの研究により、子ども虐待防止に有効なスキルとエビデンスを集積し発信する。
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Causes of Carryover |
自治体における死亡検証後の子ども虐待防止の取組について全国郵送調査を実施し、結果の概要を公表したが、これを補足する現地調査を翌年度に行うことにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は特徴のある自治体に直接出向き現地補足調査(8か所)を実施する旅費、学会発表旅費と消耗品費が主な使用計画である。
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Research Products
(1 results)