2016 Fiscal Year Research-status Report
戦前期の社会事業と感化教育との関係を明らかにする研究
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16K04208
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
野口 友紀子 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (20387418)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会事業 / 社会福祉 / 社会教育 / 感化 / 教化 / 農村社会事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、計画どおり、(1)明治後半から昭和前期にかけての感化教育、思想善導、社会教育の関連文献を収集、(2)同時期の社会事業関連、ならびに社会政策に関わる文献の収集、(3)時代背景を理解するための歴史の研究書の収集、(4)歴史分析の方法論に関する文献の収集を行なった。 具体的な成果としては、日本社会福祉学会第64回秋季大会(2016年9月11日、佛教大学)において、「社会事業は教育とどのように関わったのか-先行研究にみる社会教育の歴史的位置付け-」を報告した。この報告では、明治後期から昭和初期の社会事業と社会教育との関係についての先行研究である小川利夫と池本美和子の議論から井上友一の論考や実践、内務省と文部省とが所掌の問題などをどうとらえるのかが課題であることが明らかにした。 論文は2本執筆した。一つには、「戦後日本の農村にみる地域組織化への取り組み─社会福祉協議会と生活改善諸活動─」(東京社会福祉史研究会『東京社会福祉史研究』第10号、45-59、査読あり)である。ここでは、都市とは異なる地域組織化のかたちをとる農村に着目して、農村における社会福祉事業の地域活動について、社会福祉事業以外の活動である、農林省や文部省、総理府が主導した生活改善普及事業や新生活運動等との関係から検討した。 もう一つは、「社会事業は教育とどのように関わったのか─先行研究にみる教化事業と社会教育─」(長野大学『長野大学紀要』9-19、査読なし)である。ここでは、小川利夫と池本美和子の先行研究には共通点として井上友一を取り上げている点、相違点としては文部省と内務省の所掌の把握の仕方があった。社会事業と社会教育との関係を見る場合、「感化や風化」と「社会教化や社会教育」の中身の違いや入り組んだ関係を解明する必要があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、明治後半から昭和前期にかけての感化教育、思想善導、社会教育の関連文献の収集、同時期の社会事業関連、ならびに社会政策に関わる文献の収集が非常にはかどった。文献とは『帝国教育』『教育時報』『教育学術界』などの教育関係の戦前の雑誌の論文である。研究が順調に進展している理由として、勤務校の国内研究員制度を利用し、4月から9月まで他大学に研究員として所属していたことで、時間的にゆとりがあったこと、他大学の図書館を利用できたことが挙げられる。このような理由から、学会の大会での自由論題報告や2本の論文の執筆も可能となった。 また、月に一度研究会へ参加し、多様な領域の福祉の歴史の研究報告を聞くことにより、社会福祉の歴史の見方や分析手法を学び、研究者同士の交流を深め、情報収集ができたことも本研究が順調に進展することにつながった。関連領域の学会の大会にも足を運び、情報を収集できた。 さらに、研究の幅を広げるために、社会事業・社会福祉の分野だけでなく広く日本史関係や教育関係の文献に目を通すことに力を入れた。このことで、次年度の研究につながる農村社会事業と教化事業との関係に関する検討を進めることができ、また戦後の民間活動に関する検討も進めることができた。これらにより研究の視野を広げることができ、当初の研究計画をより深めて進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き明治後半から昭和前期にかけての感化教育、思想善導、社会教育の関連文献、社会事業関連、社会政策に関わる文献の収集を行う。さらに、思想善導との関わり、社会教育との関わりから社会事業との関係に関して検討を行うこと、治安に関わる政策レベルの内容を検討することを計画している。これらは、当初の計画通りである。これに加えて、明治後半から昭和前期という範囲を設定しているが、研究の幅を広げるために、戦後の社会福祉の状況や教育との関わりなども視野に入れて研究を深めることを考えている。この他に、この領域に関する先行研究の検討をさらに行う。 また、社会福祉関係や日本史、教育学の領域の研究会や学会の大会に参加し、社会福祉の歴史研究、日本史研究、教育学に関する見識を深め、情報収集を行う。さらに、社会福祉関係の学会の大会で報告を行い、フロアからの質問などを受けることで修正し、磨きをかけて論文にまとめることを考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年度は勤務校の国内研究員制度を利用したため、他大学の図書館を頻繁に利用することが可能であった。そのため、図書を購入することなく、コピーなどで済ますことができ、図書を購入する予定で組んでいた予算が多少残ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度については、他大学の図書館を頻繁に利用することができない状況になったため、計画どおり、必要な図書を購入する。図書は、社会福祉、日本史、教育に関わるものである。
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