2016 Fiscal Year Research-status Report
地域における包括的な中途視覚障害者支援システムの構築に関する実証的研究
Project/Area Number |
16K04211
|
Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
柏倉 秀克 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (40449492)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 視覚障害者 / 中途障害者 / イギリス視覚障害者協会 |
Outline of Annual Research Achievements |
①中途視覚障害者問題の把握:筑波大学が平成22年に実施した「全国視覚障害児者実態調査(筑波大学心身障害学系)」、厚生労働省が5年毎に行っている「生活のしづらさなどに関する調査:全国在宅障害児・者等実態調査(厚生労働省)」、その他の統計資料を分析し、中途視覚障害者が抱える問題の全体状況を把握した。 ②地域生活支援の現状把握:視覚障害は他の障害種別に比べ絶対数が限られており、地域において対応できる社会資源も十分とはいえない。こうした現状について視覚障害者情報提供施設協会の協力を得て調査した。今年度は名古屋ライトハウス、名古屋盲人情報文化センターの協力を得て聞き取り調査を実施した。 ③イギリスにける中途視覚障害者支援の動向(RNIB(イギリス視覚障害者協会)が推進するECLO(失明時アドバイザー)の役割を中心に):伝統あるイギリスの障害者支援において、当事者団体が果たしてきた役割は大きい。本論文では、視覚障害者の総合的な支援を行うRNIBに焦点を当て、同協会が実施する福祉支援、就労支援、心理支援、特別支援教育を概説した。その上で同協会が近年重点的に取り組んでいる失明前後の視覚障害者支援について調査した。同協会本部での現地調査(2015年度に実施済)、ECLOへの聞き取り調査、同協会が発刊した2つの報告書の分析を通して、病気や事故で失明した眼疾患患者が地域での自立生活に至る支援のプロセスを明らかにするとともに、わが国における視覚障害者支援への示唆を得た(日本福祉大学『社会福祉論集』第136号pp1-14)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中途視覚障害者の現状把握については、厚生労働省が発表した『生活のしづらさに関する調査』、その他の調査統計等を分析した。地域における包括的な支援に関する文献を収集し、分析を進めている。イギリス視覚障害者協会の刊行物を翻訳するとともにその分析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
イギリスにおける当事者団体による地域生活支援はその歴史が古く、地域における重要な社会資源の一つとなっている。さらに近年認知症の高齢者の支援において注目されているリンクワーカーの機能について調査する。イギリスにおいてリンクワーカー(視覚障害者支援部門におけるECRO(失明時アドバイザー))は、高齢者支援にとどまらず障害者支援においても当事者のニーズと社会資源を結び付ける上で重要な役割を果たしており、日本における地域支援においても参考にすべき点が多くあるものと考える。調査先はイギリスの視覚障害者協会(RNIB:Royal National Institute of Blind People)を中心に眼科病院、職業安定所の障害者部門、リソースセンターを予定している。
|
Causes of Carryover |
関東地区や近畿地区で予定していた研究協議会を本務校の大学院(名古屋市内)で実施したため、旅費が予算額を大幅に下回った。消耗品等の購入は当初の予想より安価であったため、物品費が予算額を下回った。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
イギリスにおける実地調査を予定しているが、調査日数が当初の予定より大幅に伸びることが予想されている。さらに現地のコーディネーターへの謝金の支払いが新たに必要となったため、繰越金を有効に活用する予定である。
|