2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K04217
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
井上 恒男 同志社大学, 政策学部, 教授 (20367973)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 介護予防 / 自立支援 / 短期集中 / リエイブルメント / 訪問 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、訪問型短期集中事業ではまだ数少ない実践事例として宇治市との共同研究が可能となったことから、初年度事業利用者のうち研究協力の得られた10人について、利用開始当初及び終了時にアンケートを実施し、支援記録等も踏まえ、利用者に与えた効果や利用前後の体調変化、利用者からの評価、事業運営に関する課題等について市の事業担当者、訪問支援者と意見交換を行い、さらに訪問指導員説明会にも報告した。 第2に、本研究に重要な示唆を得た英国のリエイブルメント事業の実地調査を2自治体で実施した。Calderdale自治体では、要援護リスクの高い高齢者が公的福祉サービス利用前に日常生活を自分でもう一度できるようになることを目指す文字通り短期集中的な支援が実施されていることが実地に確認できた一方、当初1日数回の訪問支援は現時点の我が国では実現困難と思われた。Cheshire East自治体の事業は、わが国でほとんど例のない初期認知症高齢者に特化した短期集中の訪問支援事業であり(1事例に同行訪問)、わが国の認知症初期集中支援事業との連携手法として参考となった。 第3に、自治体HP等で訪問型短期集中事業の実施が確認できた関西圏6府県(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)の32市(町村は除外)に実施状況や課題についてアンケート調査を行い(平成30年2~3月)、19市から回答をえた。事業初年度の市がほとんどであったためか、一部市を別として利用実績者数の少ない市が多く、0~95人とばらつきがあった。事業の効果的な実施のための課題として、利用者の拡大、支援ノウハウの未確立や支援者のスキルアップ、マンパワーの確保や財政的な問題、本人・支援者の事業への理解、事業の評価など多数の指摘があり、関係者において今後取り組むべき課題が山積していることが確認でき、研究蓄積の必要性があらためて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
宇治市での訪問型短期集中事業に参与観察しつつ質的調査を実施することはできたが、平成29年度は初年度事業であったこともあり研究協力者は10人と小規模な質的調査にとどまり、分析も限定的となった。 ただし、上記の関西圏調査を実施することにより、利用者実績が5人以下の市が少なくないことを勘案すればある程度の事例を観察することができ、また利用者実績が同数以上の市と宇治市の実施状況や課題を対比しつつ評価、検討することができたのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
参与観察により質的調査を実施した宇治市では、研究協力者も含めた全数では関西圏の市の中では中上位の利用者実績を平成29年度にあげることができたが、事業成果の評価は利用者の主観的な体調変化、目標の達成・未達成等にとどまり、また事業に適する者へのアプローチ、事業対象者の明確化等が今後の検討課題としてみえてきた。同事業の基本的枠組みの設計は実施自治体(宇治市)に委ねざるをえないものの、その中長期的な検討に資するためにも、引き続き宇治市との共同研究という枠組みの中で、事業2年目での利用者数の増加を期待しつつ、実施される事業の支援効果の検証・評価を量的に、また日常生活行為等に重点を置きつつより客観的に行う。 また、これまでの訪問取材調査、アンケート調査等により、訪問型短期集中事業の利用者支援に一定の成果をあげている実施事例も入手することができたことから、協力をえられる自治体についても調査、分析の対象に加え、事業評価の事例蓄積を進めていく。そして、これらの検証・評価の結果や好事例は、訪問事業実施担当者への研修会等に活用していきたい。 なお、英国のリエイブルメント事業については、その文字通り短期集中的な訪問支援をわが国に導入するのは制度的に当面は困難であると思われるが、事業実施の効果を評価する手法等に関しては参考となるため、参考文献、報告書等を入手し事業実施効果を分析する際に活用していく。
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Causes of Carryover |
(理由)参与観察した宇治市の訪問型短期集中事業は初年度事業であり、研究協力の得られた者が10人にとどまったため小規模な質的調査となり、調査や分析のための諸経費も少額にとどまった。 (使用計画)宇治市での訪問型短期集中事業が2年目に入ることから、同事業利用者の増加を期待して質的調査から量的調査にシフトさせ、事業実施効果の分析、評価等を行う経費に重点的に投入して使用する。また、訪問型短期集中事業の効果をあげていくための手法について事例蓄積が求められていることから、宇治市以外で協力をえられる自治体についても調査、分析の対象としていく。
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Research Products
(1 results)