2016 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設の小規模生活集団における援助システムモデルの開発に関する研究
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16K04221
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
遠藤 洋二 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (90588716)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 生活集団小規模化 / タイムスタディ / 実践プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
児童養護施設関係者の間では、今後の施設運営のあり方として、「小規模化→家庭的生活環境→児童・職員の良好な関係→安定した生活」というステレオタイプな議論に終始している感がある。しかしながら、既に小規模化した児童養護施設では、過去の大規模生活集団時代にもまして問題が顕在化している例も少なくない。 本研究では最終的に、児童養護施設の小規模生活集団における実践的な援助システムモデルを提示することであるが、児童養護施設の実践過程は、施設の運営形態、職員・児童の状況、地域性等などの影響による格差が大きく、一般化、抽象化されたモデル(マニュアル等)が殆ど機能していないにが現状である。したがって、研究者が目途とする「小規模生活集団における援助システムモデル」は、抽象的方法論ではなく、各々の児童養護施設において実践モデルを策定するための体系・方法・プロセスの枠組みを提示し、各児童養護施設でカスタマイズする方法を含めて提示し、具体的な実践場面で有効に活用できるものとしたい。 そのため、研究の端緒として、小規模生活集団と大規模生活集団における職員の業務内容を把握する方法としてタイムスタディを行うこととし、2016年度においては、タイムスタディに使用する「業務区分表」の策定に焦点をあてた。児童養護施設の業務をコード化するため複数の児童養護施設においてワークショップを実施した。具体的には、各児童養護施設において経験年数・性別・担当部署などが違う職員4名~6名のワーキンググループを編成した上で、グループメンバーが自らの業務をカードに記入し、その後、KJ法を用いてカテゴライズするためのグループワークを行った。さらに、各児童養護施設から得たれたデータを研究者が集約し、コーディング・カテゴライズした業務区分表を作成した後、当該業務区分表を各施設のワーキンググループに提示し意見聴取した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
兵庫県・沖縄県にある児童養護施設の協力を得て、インタビュー調査・ワークショップなどを実施しており、研究は計画に沿って、比較的順調に進展している。 インタビュー調査・ワークショップ後に予定していたタイムスタディを実施するための基本的枠組みはほぼ完了した状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、小規模、大規模生活集団における業務の量を客観的に把握するため、各生活集団で勤務する職員に対して、タイムスタディを実施し、統計的処理を行い量的データとして抽出する予定である。児童養護施設職員の業務は、その施設規模(大舎・中舎・小舎)、勤務形態(早出・日勤・遅出・宿直・夜勤など)、個人(性別・職種・資格・経験年数など)によって大きな差が生じる可能性があることを踏まえ、比較検証のため調査対象を絞り込みタイムスタディを実施する必要があるため、現在、調査対象として了解を得ている児童養護施設側と調整しているところである。 また、当初タイムスタディは、調査対象の職員にデータ収集を依頼する予定であったが、同様の業務であってもとらえ方によって区分の出る可能性があること、また、日常業務をしながらのデータ収集は職員にとって負担が大きいことを考慮し、研究者のスーパービジョンの下、児童福祉を研究する大学生・大学院生を補助者とし、一定期間、調査対象施設に派遣し、職員の業務を観察しながらデータ収集を行う方向で検討している。 また、タイムスタディ実施後は、データ分析を行った上で、質的に補完するため、いくつかの児童養護施設において、特に、大規模集団から小規模集団に移行した施設において、その両者の勤務がある職員に対して半構造化インタビューを実施し、当該インタビューをテキスト化した上で、M-GTAまたはテキストマイニングにより分析し、質、量の調査から小規模生活集団と大規模生活集団における業務の相違(類似)を把握し比較検証する予定である。
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Causes of Carryover |
調査対象の児童養護施設が謝金を固辞したことに加え、備品の単価が低額であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究補助者(大学生・大学院生)を派遣して、タイムスタディのデータ収集を行う方式としたため、当該研究補助者の旅費に充てる予定である。
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