2016 Fiscal Year Research-status Report

米国のリスクを抱えた子どもに対するオルタナティブ学校制度に関する実証的研究

Research Project

Project/Area Number	16K04241
Research Institution	Nishikyushu University
Principal Investigator	宮古紀宏西九州大学, 子ども学部, 講師 (60549129)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	オルタナティブ / 非行 / いじめ / 生徒指導 / キャリア教育 / 修復的正義
Outline of Annual Research Achievements	平成28年度は、米国カリフォルニア州のいじめ、怠学等をはじめとした児童生徒の問題行動に関する文献研究と訪問調査を主に実施した。特に、訪問調査に関しては、平成29年3月7日から13日にかけて実施した。訪問調査先は、カリフォルニア州の公立小・中・高等学校、学区教育委員会、公立オルタナティブ学校（継続教育高校、郡コミュニティスクール）、公立コミュニティカレッジ、カリフォルニア州立大学ソノマ校、NPO法人リストラティブリソースである。訪問調査のテーマは、生徒指導やキャリア教育であり、特に、全学的な生徒指導体制づくりをはじめ、リスクを抱えた児童生徒のいじめ予防やキャリア教育支援等について、管理職や教員、スクールカウンセラーからヒアリングを行った。今後、一層の調査検証が必要であるが、今回の学区教育委員会のヒアリングからは、「出席日数」、「成績」、「態度・行動」の３点について、教育委員会として基準を設けて、学校へ適切に指導・助言することで、学校の生徒指導体制づくりの支援を行い、それがひいては、高校卒業率の向上に寄与する可能性が見いだされた。カリフォルニア州の学校教育制度を広範にわたり把握するため、公立オルタナティブ学校以外にも、訪問調査を行うことで、横断的かつ縦断的な視点の下で、児童生徒に対する生徒指導やキャリア教育の制度・政策論的な考察を行うことができた。今後の研究の展開としては、今回の調査では訪問がかなわなかった州教育省へのヒアリングを行い、よりマクロな視座で、いじめをはじめとしたリスクを抱えた児童生徒への生徒指導施策の取組を調査し、その後の実証的な社会的機能に関する調査研究（数量研究等）につなげたいと考えている。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 平成28年度は、公立オルタナティブ学校だけでなく、一般の公立小・中・高校をはじめ、学区教育委員会、さらには、リスクを抱えた児童生徒が義務教育段階を終えた後に、どのような経路を辿るかを検討するうえで、公立コミュニティカレッジや州立大学にも視点を広げて、訪問調査を実施した。このような広範囲にわたる訪問調査を敢行することで、リスクを抱えた児童生徒等への生徒指導やキャリア教育について、より包括的に考察をすることができた。また、米国では、各学校に対して、様々なNPO法人が多様な教育プログラムを提供しているが、今回の訪問調査では、修復的正義理念に基づくいじめ防止プログラムを展開しているNPO法人を訪問でき、学校とNPO法人の連携の実際についても検討することができた。当初予定している以上の訪問調査先へのヒアリングができ、また、様々な資料も収集できたため、現在までの進捗状況として「おおむね順調に進展している」と判断できる。
Strategy for Future Research Activity	平成28年度は、リスクを抱えた児童生徒への支援を意図した公立オルタナティブ学校のほか、一般の公立小・中・高等学校、学区教育委員会、公立コミュニティカレッジ、州立大学、NPO法人と、広範に訪問調査を実施し、資料収集とともにヒアリングを実施することができた。平成29年度の研究の展望としては、州教育省へのヒアリングを行うとともに、州あるいは郡内の公立オルタナティブ学校等への質問紙調査等を検討・実施し、質的データのみならず、数量的データを蓄積できるように、研究を計画したいと考えている。特に、いじめや不登校に関する生徒指導体制及び関係機関連携に関する研究を実施する予定である。また、今年度は、平成28年度の訪問調査や文献研究で得られた知見をもとに、日本比較教育学会や日本教育制度学会等、いくつかの学会への投稿や学会発表を検討したい。