2017 Fiscal Year Research-status Report
米国のリスクを抱えた子どもに対するオルタナティブ学校制度に関する実証的研究
Project/Area Number |
16K04241
|
Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
宮古 紀宏 国立教育政策研究所, 生徒指導・進路指導研究センター, 主任研究官 (60549129)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 学校評価 / アカウンタビリティ / オルタナティブ学校 / 学校ダッシュボード / 学校改善 / カリフォルニア州 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成28年度に実施した米国カリフォルニア州研究出張をはじめ、これまでに科学研究費補助金により継続してきた米国研究出張において入手した資料やインタビューデータ等を整理・分析した。特に、平成29年度は、カリフォルニア州のオルタナティブ学校評価制度にとどまらず、一般の初等中等教育学校も射程に入れて、2014年度から新たに運用されるようになった学校のアカウンタビリティ制度である「学校ダッシュボード」(California Accountability Model & School Dashboard)の研究を実施した。本研究の意義及び重要性は、学校教育のパフォーマンスをどのように測ることが妥当であるのか、また、一般市民が利用可能な学校のアカウンタビリティ制度をどのように構築していくかということに対し、重要な示唆を与えうることである。従来の学校教育に対する米国のアカウンタビリティ制度は、「学力」という単一の物差しに傾斜しすぎる傾向があり、それゆえに、その単一の基準が権威化されることで、学校や教師の実践や成果を歪め、矮小化する可能性が指摘されてきた。しかしながら、新たな仕組みである「学校ダッシュボード」制度は、学校のパフォーマンスをルーブリックを通して、多元的(6つの州指標と4つの地域指標)かつ経年的に見る仕組を構築したことで、それぞれの学校の実像をよりリアリティをもって描き出せるようになった。さらには、カリフォルニア州では、この新しいアカウンタビリティ制度の下で、低いパフォーマンスと認定された学校に対して、重点的に補助金を投入することも併せて決定された。今後、このような新たなアカウンタビリティ体制の展開を見極めることは、我が国の学校評価やアカウンタビリティの在り方を検討する上で、重要な意義があると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究を含め、それ以前から科研費によって継続してきた本研究は、これまでに一定程度の研究資料・データの蓄積があるため、平成29年度は当初予定していた米国出張をせずに、これまでの研究資料・データの整理・分析を重点的に実施した。特に、米国カリフォルニア州における学校評価やアカウンタビリティの制度の調査は、以前の制度についてはこれまでに収集した資料とデータを活用し、新たな制度についてはweb資料を重点的にレビューすることで、新しい制度への経過を含めて、丁寧に検証することができた。それゆえ、現在までの進捗状況は、「おおむね順調に進展している」と評価できる。しかしながら、新しい「学校ダッシュボード」制度は、運用されて、まだ十分な年月が経過しているわけではないため、オルタナティブ学校制度の実証的な研究を行うためには、さらなる情報やデータが必要であり、それらの入手と検証は、今後の課題としたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、これまでに入手した研究資料やデータに基づき、米国カリフォルニア州のオルタナティブ学校をはじめ、一般の初等中等教育学会をも対象に、新しい学校教育のアカウンタビリティ制度である「学校ダッシュボード」の基礎研究を行った。平成30年度は、本科研費研究の最終年度であるため、カリフォルニア州の「学校ダッシュボード」の研究をさらに推し進めつつ、このダッシュボードの仕組を活用して、カリフォルニア州全域のオルタナティブ学校等のパフォーマンスについて、横断的かつ縦断的な検証を行う予定である。また、研究成果については、アメリカ教育学会における発表及び同学会機関誌である『アメリカ教育研究』への投稿等を検討している。
|
Research Products
(1 results)