2016 Fiscal Year Research-status Report
アジアから見た日本の介護:日本式介護の技能移転の可能性を探る
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16K04247
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Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
天野 ゆかり 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 助教 (60469484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
比留間 洋一 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 助教 (30388219)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アジア / 介護 / EPA / 外国人介護人材 / 技能移転 / 技能実習 / 看護 / 介護人材養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アジアにおける介護のグローバリゼーションを視野に入れ、日本式介護の技能移転の可能性について検討している。28年度は基礎調査として、ベトナム人及びフィリピン人EPA介護福祉士(候補者)に対して現在までの経験の振り返りと将来のビジョンを、ベトナム人看護学生には日本の介護に対するイメージや期待することなどについてインタビュー及びアンケート調査を実施した。(技能実習生は来日してから実施する) アジア各国の介護や日本から進出した企業や法人の状況を把握するため、関連するセミナーに6回参加した。これにより、海外展開や外国人介護人材の受入れに関わる官民のキーマンとの交流やネットワークが実現し、今後の調査や連携に繋がった。 アジアでの介護サービスのニーズは、家族の対応が困難な「認知症(ケア倫理含む)」「重度の介護」「リハビリ」であるとの調査結果を得た。ベトナムのズイタン大学の要請で看護学生120名に対し日本の高齢者のケアに関するセミナーを実施した。また「ケースで学ぶ認知症ケアの倫理と法」(南山堂)を共同執筆した。今後もこういったケアの人材育成に関わる教育や教材作りをすすめることで、アジア版の介護人材養成のプログラムが見えてくるものと思われる。 技能移転の可能性について、ベトナムの病院で働くJICAリハビリ技師(2名)や日本で看護師の資格を取得し就労経験のあるベトナム人看護師(4名)にインタビューした。その結果、日本とベトナムでは医療・介護制度や職場風土、看護やリハビリに求められる役割が違うため、日本の価値観や知識や技能をそのまま移転することは困難であることが分かった。 今後は調査対象をタイや中国に広げる。アジアへ進出した日本企業が日本の「技能」や「価値観」をどのようにローカライズして発展させているのか、実態を調査することで、「介護技能移転の可能性」がより明らかになるはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である①EPA候補者へのアンケートおよびインタビュー、②文献調査、③現地調査、④研究会はほぼ実施できている。ただし、共同研究者の比留間によるベトナムの介護現場のフィールドワークは、調査日程の都合で見学やインタビューに留まり十分な調査データは得られていない。これについては29年度に実施していく。 候補者のインタビュー等では、施設ではない場所で自由に語ってもらうため、「座談会」として互いに意見を述べ合う場を提供した。研究協力者の五島も参加し、候補者の思いが語れるようにサポートした。同時にEPA受入施設担当者および受入を検討している施設の担当者からは今後の人材確保と人材育成のビジョンについてヒヤリングを実施した。 同じく研究協力者のTung氏(ナムディン看護大学学長)、Muc氏(ベトナム看護協会会長)ともベトナムで開催したセミナーで同席し、介護を経験したベトナム人看護人材のキャリアや看護学生のアンケート調査の結果について意見交換できた。このセミナーには、上記のほか看護・介護人材の送り出し機関でもあるベトナム労働・傷病兵・社会省(MOLISA)海外労働局(DOLAB)の広報官、ハドン総合病院の医師、看護教員、看護協会幹部らが参加した。 国内の研究会では、ベトナムでJICAボランティアとして活動した理学療法士を招き、ベトナムの医療、リハビリと技能移転の可能性について講義してもらった。研究会で補えない部分は、各セミナーに参加し情報収集と人脈拡大に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通り、外国人介護人材(EPA、技能実習、学生)を対象にしたアンケート、インタビューを実施し、日本とアジアの介護や看護の業務や価値観の相違性について明らかにしていく。 また、外国人介護人材を受け入れている現場(日本)、養成している教育機関(海外)、アジアに進出した企業(海外)に行き、外国人介護人材の養成・育成に関する知見を得る。現地調査したベトナム、タイ、中国、台湾での調査結果をまとめ、それぞれの国の高齢者ケア事情についてまとめる。そこに関わる制度、専門職、家族のかかわり、教育内容などを総括し、それぞれの高齢者ケア(介護)について概観し、日本から移転できるもの、日本が学ぶべきもの、そしてアジア共通の介護人材の育成やそれをつなぐブリッジング人材の育成について総括する。
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Causes of Carryover |
当初は国内の外国人介護施設として遠方の地域を想定したが、対象者の地域が関東から東海地方となったことや、候補者や担当者をまとめて招へいしてヒヤリングしたため、国内調査旅費の節減につながった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は海外調査(タイ、台湾または中国)がある。タイは2都市、台湾・中国も複数の都市、施設の調査を検討しており当初予定より日程を延長するため、残額はそちらの調査旅費として使用する。
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Remarks |
ベトナム看護協会にてセミナーを開催し、ベトナム看護学生を対象とした日本の介護現場への就労意識等へのアンケートの結果報告等を実施した。それを踏まえベトナムの看護人材が日本で介護の経験をして帰国したのちのキャリア形成や、ベトナムにおける「介護」という職業や専門教育のあり方について検討した。ベトナム看護協会会長、ナムディン看護大学学長、ベトナム労働・傷病兵・社会省海外労働局(DOLAB)広報官など参加)
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