2017 Fiscal Year Research-status Report
アジアから見た日本の介護:日本式介護の技能移転の可能性を探る
Project/Area Number |
16K04247
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Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
天野 ゆかり 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 講師 (60469484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
比留間 洋一 星城大学, リハビリテーション学部, 准教授 (30388219)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外国人 / ベトナム / タイ / EPA / 日本の介護 / 技能移転 / アジア / 介護人材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジアと日本の高齢者ケアの相違性を明らかにすること、日本式介護の技能移転の可能性について考察することの2点を大きな目的として取り組み、2年が経過した。 29年度は現地のケアの実態を把握するため、タイ(ラーチャブリー、バンコク、チェンマイ)とベトナム(ダナン、ビンディン)の海外調査を実施した。タイでは都心部を中心に日本の福祉用具(電動ベッドや杖、介護用靴などの関心が高まっていた。タイでは在宅療養、介護が一般的なため、日本式介護ホームなどのニーズは少なく、開設後まもなく閉鎖した施設もあった。一方で、介護士派遣型の需要は増加していた。現地スタッフからは何でもお手伝いするケアから「自立支援」を目指したケアをすることへの心理的抵抗は少なく、高齢者の心身機能が回復している実感が得られるため、介護のやりがいにつながるとの感想が聞かれた。ただし、タイでは既にバンコクなど都心部のケア人材不足が問題となってきており、技能実習等などの送出しは限定的と予想される。 ベトナムでは、ビンディンのある村で介護ニーズ調査を実施した。村の高齢者は、脳梗塞や認知症、戦争による下肢切断などによる生活の不自由が生じているものの、若者は都市へ出稼ぎにでており、老老介護や家族による虐待など日本と同様の問題も多く見られた。トイレや浴室などの環境の未整備や、介護の専門家がいないことの問題は深刻で、不適切なケアや社会資源の不足の伴う心身機能の悪化などがみられた。 台湾、中国に関しては、事前情報が少なかったため、今年度は現地調査を見送り、現地情報に詳しい専門家等に話を聞くことから始めた。関連セミナー7回出席、研究会3回実施するなどして、30年度の現地調査に備えた。 今までの研究成果のまとめとして、研究論文4本(書籍、専門雑誌、紀要)を執筆した。また、全国レベルのシンポジウムでの発表1本を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である①EPA介護福祉士(候補者)および日本人スタッフへのインタビュー、②文献調査、③現地調査、④研究会の実施はほぼ予定通りに実施した。①では、日本人管理者・指導者等5人、ベトナム人EPA介護福祉士候補者および介護留学生5人に対し実施した。29年度はベトナム人候補者にとって国家試験の初受験年度であったため、学習や帰国スケジュールを考慮し、直接面会が難しい場合はメールや電話などの方法で実施した。 ③の現地調査では、タイ(天野・比留間)とベトナム(比留間)に訪問した。タイでは現地に進出した日系企業2社を訪問した。タイの高齢者ケアの特徴を知るため、国営施設や海外資本の施設も見学した。ベトナムではビンディン省の村を訪問し、農村における介護の実態と介護のニーズ調査を実施した。台湾・中国は、調査に適した訪問先をじっくり選定するため文献調査と専門家、関連企業との研究会などによる情報収集を優先させたため、現地調査は30年度に延期した。 ④の研究会は「台湾における外国人介護の課題と展望」「ベトナムの技能実習と外国人留学生受け入れの動向」として専門家よりレクチャーを受けた。その他、JICA専門官やタイやベトナムで高齢者リハビリのボランティア経験者、介護事業の海外展開をしている企業の代表取締役、内閣官房健康医療戦略室、全日本病院協会、みずほ情報総研など多くの関係者と情報交換した。関連するセミナーにも7回出席した。3月には、ベトナム看護協会の会長(本研究協力者)を招へいし、ベトナムにおける「介護」という職業及び資格の創設に関する意見交換を実施した。 上記の実施を通し、本研究目的である「日本とアジアの高齢者ケアの相違」「日本式介護技術の技能移転の可能性」について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、29年度の調査成果をもとに前年度訪問できなかった台湾・中国の調査を加える。台湾での外国人(インドネシア、フィリピン、ベトナムの順に多い)の介護現場での受入れ実態を参考にしながら、今までの調査研究の内容を総括する。 さらに、ベトナムEPA介護福祉士の1期生(合格率93.7%)の進路を調査しながら、帰国者のキャリアの活かし方や技能移転の可能性について調査する。 また、3年間の研究の総括として、「アジアから見た日本の介護」としてシンポジウムを開催し、報告書を作成し関係者に配布する。
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Causes of Carryover |
29年度の海外調査では、タイのほかに台湾・中国を検討していたが、技能実習生の日本での受け入れの遅れがあり、国内の課題に照らした調査先を選定するに至らなかった。そのため、台湾、中国、技能実習に関係する企業などの専門家から情報を得るなど、国内における調査先の選定や調査方法などの準備に時間を要した。そのため、29年度の残額を30年度に延期した台湾・中国の調査費用に充てる。
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Research Products
(6 results)