2016 Fiscal Year Research-status Report
子ども虐待ケースに対する区分対応システムでの支援型対応実践モデルの開発的研究
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16K04248
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Research Institution | Kobe Women's Junior College |
Principal Investigator |
畠山 由佳子 神戸女子短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (60442331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 冬樹 旭川大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80459833)
加藤 曜子 流通科学大学, 人間社会学部, 教授 (90300269)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 家族支援 / 子ども虐待 / 在宅支援 / 市町村 / 区分対応システム / Differential Response |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は平成25年度ー27年度科学研究費補助金助成研究(基盤研究C)として行った「日本における児童虐待対応ケースに対する区分対応システムの開発的研究」の次段階の研究として、「初期対応にて、緊急度が高いケース及び差し迫った危険があるケースを振り分けた後の支援型対応の実践モデルを開発すること」を目的としていた。当該年度である平成28年度は研究実施計画に沿って次のことを行なった。①市町村が持つ脆弱性のある家族に対する市町村の現状に関する聞き取り調査では13の市における聞き取り調査を実施した。DVケース、精神保健ケース、ネグレクトケース、ひとり親家庭ケースについてその支援の実態と対応に関する意思決定について特に聞き取りを行ない、次年度に計画されている質問紙調査の質問項目作成のための基礎データを得た。②支援と介入のアプローチの指針作りのための調査については、平成28年度は3か所の支援者に対する研修会にてのデータ収集を行い、1560のテキストデータを得ることができた。平成27年度より蓄積されたデータは4084データとなっており、いったんこの段階でテキストマイニングによる分析を行い、いくつかの種別の行為(叱るなど)についての判断基準について結果を得ることができた。③北米・欧州における脆弱性をもつ家族に対する支援については、フランスとアメリカにて現地調査および学会参加における情報収集を行い、家族支援に対する新しい知見を得た。フランスでは子ども保護に関する新法が2016年3月に施行され、そこでは地域格差の解消、司法的介入と行政的(福祉的)介入の見直し、縦割り行政の見直しが行なわれつつある。子どもの安全確保を重視する新法とこれまでのフランスの伝統的な家族支援に対する価値がどのように実践に反映されるのかが注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒアリング調査は、当初の計画通りの13カ所の幅広い地域の自治体で行うことができた。また、計画に加えて子ども家庭相談主管以外の支援者(精神保健福祉士)に対するヒアリングも実施することができた。追加のデータも踏まえて、現在分析中である。また、次年度の調査のための質問紙作成についても、その構成や具体的な質問項目についての知見を得ることができた。 支援と介入の指標作りについては、データ数が順調に収集されてきている。さらに精度の高いデータを集めるために、継続的に分析結果を見ながら、収集の枠組みを修正しているため、満遍なく広いデータを収集することができている。対象も家庭相談員のみではなく、幅広い市町村支援者(事務職・管理職も含め)、児童相談所児童福祉司など、属性も限定せずにデータを集めることで、属性と判断の関係性も考察することができると考えている。 今まで主流であった英語圏の調査だけではなく、欧州、中でもフランスの子ども保護施策と家族支援の状況についての現地調査は大変興味深く貴重な知見を得ることができた。継続して調査を行なうためのネットワークも構築できつつあり、今後はベルギー、ドイツ、イギリスなどの周辺国での調査も行なっていくことを予定している。アメリカについては、イリノイ州では新しい児童家庭局長の下、DRの再開も含めた予防的・支援的な施策を5年計画で予定していることが明らかになった。今後の施策展開については、施設の解体や措置解除後の自立支援、具体的な生活支援の提供を含めた在宅支援の強化など本研究の根幹となるテーマと重なる部分が多く、さらに継続して調査していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、精神疾患を持つ親への支援についての聞き取り調査を精神保健福祉士と親の会を中心に数ヶ所、追加で行なう予定である。またDVケースに対してもDV相談員側へのヒアリング調査を計画中である。さまざまな立場の支援者から意見を収集することで、子どもの安全を軸にしながら家族支援するとは、市町村にとってどのようなことなのか、多角的な視点から考察したいと考えている。 「支援と介入の指針作り」についても、追加調査を数か所行った後に、最終的な分析に入っていきたいと考えている。これらの幅広い範囲で多層的におこなった本年度の調査をまとめたものを、研究協力者および分担研究者とともに研究会において検討し、平成29年度には質問紙調査を準備・実施する予定である。 海外調査についても、今まで研究者の調査のフィールドであった米国に限定せず、欧州にもその調査対象を広げたうえで、「子ども保護施策における家族支援」についての現地調査を行い、家族支援と子どもの安全確保の間のバランスという国や文化を超えて共通した課題にどのように取り組んでいるのか、について知見を広げていきたいと考えている。 これらの調査で収集したデータについてワーキンググループで検討し、H30年度には最終成果品として、市町村が使い手となる支援型対応実践モデルを作成する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に関しては、学会参加については、国際便の渡航費を他の研究助成費による調査日程とあわせ、国内移動(シカゴーダラス)のみの支出となったために使用額が生じた。また、聞き取り調査についても、日程調整がうまく行き、同日程において複数の調査対象を訪問することができたたことも原因である。 ワーキンググループについては、当該年度においては3回開催を予定していたが、メンバーの予定があわず、1回しか開催することができなかった。しかし、代行措置としてメールでの連絡や討議が活発に行なわれるようになったため、研究には影響は及ぼしていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、欧州での学会参加および調査、ワーキンググループでの研究会を複数回行なう予定である。
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Research Products
(2 results)