2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04257
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
品田 瑞穂 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70578757)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 利他行動 / 同調 / 身体的同期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、儀式や行進など、タイミングを合わせて人々が同じ動作をする身体的同期(physical synchrony)に関する新たな理論モデルを構築する。近年の研究において、身体的同期は利他性を高めるとともに、攻撃性を高めるという一見矛盾する結果が報告されているが、これらを包括的に説明する理論は未だ存在しない。そこで本研究では、人間の普遍的な心理特性を進化的な適応課題への対処として捉える適応論的アプローチに基づいて、身体的同期は重要な集団の枠組みを規定する手がかりとして機能し、集団内で共有された規範に従う行動を促進するという理論モデルを、一連の行動実験とフィールド調査によって検討する。 1.前年度には、行動実験によって身体的同期が他者に対する共感性、類似性、好意度を高めると同時に、コストのかかる利他行動(他者の利益のために嘘をつく行為)の頻度を高めることを明らかにした。また、質問紙調査によって他者との協力の望ましさ(協力規範)と、他者と歩調を合わせることの望ましさ(協調規範)のそれぞれを測定する尺度を作成した。今年度はこれらの成果に基づき、より大規模な調査を行い(n=579)、それぞれの規範を支持する程度と心理的特性との関連を検討した。その結果、協調規範への支持は低い自尊感情と関連することが明らかになった。 2.前年度に行った実験成果を基盤として、より他者の存在が感じられる状況で身体的同期の操作を行うとともに、従属変数として新たな行動指標(報酬分配)を用いて検討を行った。その結果、身体的同期を行った群では、統制群に比較し、相手から不公平な分配をされた場合に拒否せず、受け入れる傾向がみられた。これらの結果から、身体的同期は利他性のみならず他者への服従・同調傾向を高める可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究成果を学会において発表した際、より厳密に統制された身体的同期の操作方法について示唆を得て、コンピュータープログラムを作成して身体的同期を行うよう修正し、予備実験を行った。しかしその結果、身体的同期を共に行う他者よりも、操作するコンピューターに対して実験参加者が注意を向けてしまい、先行研究において観察された身体的同期の効果が再現されないという意図しない結果が生じた。このため、実験手続きの再検討に時間を要し、計画していた実験の一部が完了していない。これらの理由により、延長申請を行い、次年度に実験および調査を実施することを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ひきつづき実験室実験及び調査を実施し、身体的同期が利他行動および攻撃行動に与える影響について検討する。また、これまでの成果の一部は既に国内・国際学会において発表しているが、そこで受けたフィードバックをもとに研究計画を改善しつつ、成果を学術論文としてとりまとめ、公開する準備を進める。
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Causes of Carryover |
今年度の研究成果を学会において発表した際、より厳密に統制された身体的同期の操作方法について示唆を得て、コンピュータープログラムを作成して身体的同期を行うよう修正し、予備実験を行った。しかしその結果、身体的同期を共に行う他者よりも、操作するコンピューターに対して実験参加者が注意を向けてしまい、先行研究において観察された身体的同期の効果が再現されないという意図しない結果が生じた。このため、実験手続きの再検討に時間を要し、計画していた実験の一部が完了していない。これらの理由により、延長申請を行い、次年度に実験および調査を実施することを計画している。
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Remarks |
研究代表者のホームページ
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Research Products
(4 results)