2016 Fiscal Year Research-status Report
愛着の内的作業モデルの潜在的側面が潜在的情動制御に及ぼす影響
Project/Area Number |
16K04258
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
上淵 寿 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20292998)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 潜在性 / 自己制御 / 情動 / 信念 / 関わり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,潜在的な愛着の内的作業モデルと情動制御の関係を検討することを目的とする。この課題の内,本年度では,情動と自己制御についての研究成果が得られた。第一に,情動経験等に影響する潜在的な自己制御システムを測定する方法を開発した。具体的には,利得の存在に接近し,利得の不在を回避しようとする自己制御システムである「促進焦点(promotion focus)」と,損失の不在に接近し,損失の存在を回避しようとする自己制御システムである「予防焦点(prevention focus)」の2つの自己制御システムの潜在的測定方法を開発することができた。愛着の内的作業モデルは,一般に「関係不安」と「親密性回避」の2つからなると考えられているが,前者は促進焦点に類似し,後者は予防焦点に類似している。このため,自己制御システムとしての内的作業モデルの測定に近づくことができた。第二に,感情や動機づけ等の情意の自己制御に,他者との関わり(協同学習等)が影響することを調査によって示すことができた。愛着とは元々は養育者と子どもとの愛情の関係から出発しているが,人が発達すると,必ずしも養育者ではない他者との関わりに影響するものである。その意味で,他者との具体的な関わりが情意の自己制御に影響するのは,重要である。第三に,一般の人がもつ素朴な信念が情動経験の在り方に影響することを示すことができた。具体的には,人の公正感に関する信念が,他人に良くないことが起きたときに,シャーデンフロイデ(いい気味感情)を喚起するということを調査によって見出した。つまり,公正な世界を求める信念が,他人に良くないことが起きたことを他人にせいにすることで,「いい気味だ」という感情が生じることを,世界で初めて直接証明した。これにより,内的作業モデルもその1つである,いわゆる素朴な信念と情動・感情との関係を間接的に示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,潜在的な自己制御システムの測定方法の開発を行い,信念と感情喚起との関係を示すことができた。しかし,当初計画していた「無意識に目標刺激を与えることでその目標に応じた情動制御を行う可能性が高まる,という関係に潜在的な内的作業モデルが影響するかを検討する」ことの内,無意識の目標設定の個人差の測定までにとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず潜在的な自己制御システムと潜在的な内的作業モデルとの関係を明らかにする。次に,進捗にやや遅れがあるため,潜在的な内的作業モデルと情動制御について,無意識に設定した目標に応じた情動制御に内的作業モデルが関係することを,明らかにするため,研究を行う。
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Causes of Carryover |
旅費が予定していた金額よりもかかり,また研究に必要なソフトウェアが高額で購入できなかったため,残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に補助される予算と併せて,研究に必要なソフトウェアを購入し,研究を進める。
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Research Products
(3 results)