2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K04259
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
福島 治 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40289723)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自己概念 / 自己愛 / 精神的健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
自分自身の行動は過去事例として記憶されるだけでなく、自己の行動特性情報として意味的に要約されており、「話し好き」、「気が短い」といった特性語を用いて表すことができる。自己概念の一部は、このような特性語が自分自身にどの程度当てはまるかによって評価される。しかし、自己の行動は状況を通じて常に安定しているわけではなく、様々な他者の存在やその時々の状況の変化によって変動する。それゆれ、特性語が当てはまる程度の判断もそれほど安定的ではない。 このような自己の特性情報は、関係性スキーマとして他者の特性情報と連合して保持されているようである。これまでの研究でその部分的な証拠も得られてきた。また、複数の関係性を弁別して自己の特性に関する判断がなされることも示された。このような知見は、特性判断には関係性による変化があることを示している。 しかし、同一の関係内に着目してみても特性判断には変動がある。その特性判断の変動についてさらに調べるため、数日間の測定間隔を置きながら一カ月程度の期間に、自己の特性判断を繰り返し行う方法を用いたところ、人は同じ関係性においても自己に関して異なる判断をしていることが明らかになった。また、異なる関係性による変動と同一の関係内でみられる変動とを区別すると、いずれも自己愛が高いほど変動性の高い傾向がみられた。一方、自己概念の不安定性は精神的健康の低さと関連があるとみられてきたが、本研究では異なる関係性による変動ではなく、同一の関係内に見られる変動が高いほど健康度が低いという関連が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
自己と他者の特性情報の連合を仮定する関係性スキーマ理論の観点は、関係性による特性自己概念の変動を説明する。しかし、それのみでは関係間の変動しかみることができない。一定期間の間に繰り返し自己に関する特性判断を求める方法でデータを得たところ、関係間の変動のみならず、関係内にも一定量の変動がみられた。さらに、その関係内の変動は自己愛や精神的健康のような個人差指標と関連があった。当初計画は、関係性スキーマ理論に立脚して研究を進める予定であったが、自己の特性情報や自己概念に関する研究を進めるためには、自己に関する特性判断の個人内での変動の大きさを評価する方法を確立することと、その変動が何に起因するのかについての検討が必要であるとわかった。当初計画は行き詰まっていた部分もあったが、新たな研究展開に向けて大きく進展できた。また、これまでの知見を著書としてまとめることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
一定期間の中で繰り返しデータを得る方法を経験サンプリングと呼ぶが、今後はこの方法を用いて、自己の特性判断に関する変動性とその規定因について検討する。経験サンプリング法では、データ変動を個人間と個人内に分けるが、ここではさらに、個人内の変動を複数の関係文脈内の変動の合成として分割できるか検討を試みる。このような入れ子状のデータ構造は階層的分析が適しているのだが、この領域は線形混合モデルやベイズ統計を用いた解析など近年急速に拡大しはじめた分析方法を積極的に取り入れている。本研究も、そうした新しい潮流に乗って検討を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度使用額の端数として7円が残ったために次年度使用額が生じた。これは次年度の消耗品費に加える。
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Research Products
(3 results)