2018 Fiscal Year Research-status Report
道徳的意思決定の進化心理学的基盤についての実証的研究
Project/Area Number |
16K04261
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小田 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50303920)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平石 界 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (50343108)
松本 晶子 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (80369206)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 道徳的判断 / 道徳的非難 / 利他行動 / コストリー・シグナリング理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
道徳的判断に関わる意思決定の至近要因について、実験と調査を実施した。
1. コストリー・シグナリング理論からみた道徳的主張についての実験:生存や社会に関わる、賛否が二分されているような問題について実験参加者に意思決定をしてもらい、続いて自分が多数派と少数派のどちらに属しているのかという情報を与えた。そのうえで、升目を鉛筆で塗りつぶしてもらうことにより自分の主張の強さを示してもらった。今年度は、他の参加者に塗りつぶし結果を見せることを告げたうえで、同様の条件で実験を行なった。その結果、昨年度の実験においてみられた、少数派条件において塗りつぶしが多いという結果がみられなくなった。 2. 利他主義者の検知メカニズムに関する実験:高利他主義者と低利他主義者の動画を加工し、鼻から上と下のそれぞれをモザイクで隠したものを作成した。実験参加者にこれらの動画を見てもらい、動画の人物を相手とした分配委任ゲームを行ってもらった。その結果、鼻から上が隠されていた、つまり鼻から下のみで判断をした群では正しく見極めができていなかったが、鼻から下が隠されていた、つまり鼻から上のみで判断をした群では見極めができていた。これは、利他主義者の検知においては眼輪筋が手がかりになっているのではないかという過去の研究結果と一致するものである。 3. 道徳性にみられる同類婚の可能性の検討:Haidtらの道徳基盤理論によると、道徳にはいくつかの基盤があり、その強弱によって道徳性の個人差がみられる。道徳とは集団の成員の多くによって支持されている行動様式なので、似た道徳性をもつ者が集まることで維持されていくと考えられる。そこで、道徳基盤理論を基にした質問紙を作成し、理想の異性に求める道徳性と回答者自身の道徳性との関連について検討した。その結果、道徳性については理想の異性と自身とのあいだで非常に高い相関がみられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際学会大会に参加し、前年度の成果を発表することができた。また新たに道徳性の同類婚に関する調査を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画のうち、個人差に関する調査が進んでいなかったため、今年度はこれまでの実験的研究を継続しつつ、嘘や道徳的判断に影響する個人差についての調査研究を重点的に進める方針であった。道徳基盤理論に基づいた同類婚に関する研究を進めたところ、興味深い結果が得られ、さらなる検討が必要となった。また道徳的判断に与える多数派・少数派情報の影響についてWeb実験ならびに実験室実験を進めた結果、検討するべき実験条件が当初の想定以上に多くあることが強く示唆された。そこで研究期間を延長し、これらの課題についてさらに研究を進める。
|
Causes of Carryover |
理由:実験参加者への謝金支払いが当初の計画よりも少なかった。
使用計画:現時点までに得られた知見について他の研究者からの意見を学会等で収集し、追加の実験・調査を行ったうえで論文として報告するための旅費、謝金、英文校閲費等として使用する。
|
Research Products
(8 results)