2016 Fiscal Year Research-status Report
社会的時間割引の抑制に関わる死の想像の神経基盤の検討
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16K04262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳澤 邦昭 京都大学, こころの未来研究センター, 特定助教 (10722332)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 死の想像 / 社会的時間割引 / 報酬価値 / 未来思考 / 血縁関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は将来の死を想像することが、社会的時間割引(時間経過に伴い集団で獲得する報酬の主観的価値が減衰する現象)に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。とりわけ、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging: fMRI)により、将来の自分自身の死が関連する出来事を想像している際の神経活動を測定し、それらの神経活動と社会的時間割引率の関連を検討する。今年度の研究では、行動実験によるデータの収集とともに、脳画像データの取得に着手している。行動データの分析結果から、死関連の出来事を想像することは、従来の時間割引(時間経過に伴い個人で獲得する報酬の主観的価値が減衰する現象)を増加させる一方で、社会的時間割引への影響は少ないことが確認された。したがって、これらの結果は、将来の自分自身の死を想像することは、時間軸上の価値を修飾する作用を持つが、その修飾作用が個人だけの報酬の場合と集団の報酬の場合とで異なることを示唆する。脳機能画像データの取得は来年度も引き続き行い、データ取得完了後に解析を実施する。特に、自分自身の未来の死を想像するプロセスと、その想像した内容を意思決定に反映するプロセスを画像解析により検討することで、死を想像することがどのようにわれわれの時間軸上の価値観を左右するのかを明らかにする予定である。なお、本研究で得られたデータについては、学会・研究会等で報告する予定であり、最終的な研究成果については海外の学術雑誌で報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに画像データの取得が順調に進んでおり、来年度以降もデータ取得を継続して行う予定である。データ取得が完了次第、解析に力を入れて進めていく予定である。3年間の研究期間内に、一定の研究成果を得ることが見込める状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度にはデータ取得を完了し、本格的に解析を進めていく予定である。特に、将来の自分自身の死の想像に関わる神経基盤を特定するとともに、それらの神経活動が集団報酬の意思決定を修飾するプロセスの検討を進めていく。また、研究の進捗状況に応じて、集団の種類(e.g., 親しい他者で構成される集団、血縁者で構成される集団)によって、死を想像する影響が異なるかどうかについても検討を進める。
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