2016 Fiscal Year Research-status Report
教員の情報開示に対する消極性に関わる集団的要因の検討
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16K04263
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
植村 善太郎 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20340367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
釘原 直樹 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60153269)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 信頼感 / 保護者 / 教員 / 保育者 / クレーム / 情報開示 / 学校 / 幼稚園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第1に、保護者に対する教員の信頼感を検討するための調査を行った。情報を開示することに対する回避感情は、Solnit(2009)が言及した「エリートパニック」の概念に基づくと、一般大衆が適切に情報を扱ったり、感情を制御することに対する不信が根本にあると考えられたからである。教職員を対象としたオンライン調査を実施し、小中学校教諭548名、幼稚園・保育所・認定こども園の保育者257名から有効なデータが得られた。現在明らかになったのは、次のことである。まず、保護者からの直接のクレームを「たびたび」あるいは「たまに」受けたことがある人が、23%ほど存在し、一方で、全く受けたことがない人が20%ほど存在していた。何らかの理由で、保護者からのクレームを受ける頻度が高い人と、逆に、全く受けることがない人が2割程度ずつ存在していることがわかった。次に、保護者に対する信頼感を、「教員からの話を正確に理解してくれる」という側面から尋ねたところ、保護者に対する信頼の程度には小さくないばらつきが見られた。そこで、直接的にクレームを受けた程度ごとに、保護者に対する信頼の程度を検討したところ、クレームを受けた頻度が高いほど、信頼感が低下していく傾向が見られた。この傾向は、自身に対するクレーム体験ではなく、クレームを同業者が受けたという情報を聞いた頻度と保護者に対する信頼感との関係においてもみられた。クレームを受ける可能性を高く認識することは、保護者に対する信頼感を低減させる可能性があると解釈されうる。データの分析は現在進行中で、さらに他の要因との関連性の解析を進める。 第2に、研究分担者と連携し、組織の不適切な行動が生起する要因について検討を進めた。第3者から不適切とみなされる行為が、利己的な動機に基づく場合と、組織に対する積極的な献身に基づく場合がある可能性を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報開示を阻害する要因について、概念的な検討を進めることができた。また、計画していた保護者に対する信頼感の構造に関わるオンライン調査を実施し、教職員の保護者に対する信頼感について、重要なデータを得ることができた。 今後、集団的な要因についての検討を進め、可能な限り、妥当かつ信頼性の高い調査方法を検討し、実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに実施した、教職員の保護者に対する信頼感に関するデータの分析をさらに進め、特に情報開示に関係する信頼感に大きく影響する要因を検討する。同時に、これまでに研究を行ってきた集団的要因についての検討を、概念面と具体的な測定面の両面でさらに詳細に行う。これらの成果を総合し、情報開示の消極性を規定する要因について調査を行なうことを計画している。こうした研究の結果に基づいて、学校、ひいては組織の情報開示をうながす環境条件について明らかにする。
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Causes of Carryover |
オンライン調査の費用が想定額を下回ったこと、また、海外の学会での発表を見送ったことが主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度収集したデータを分析し、それを発表するための経費とする予定である。また、執行状況によっては、今後実施していく予定の調査経費にも充当することを検討している。
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