2018 Fiscal Year Research-status Report
教員の情報開示に対する消極性に関わる集団的要因の検討
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16K04263
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
植村 善太郎 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20340367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
釘原 直樹 東筑紫短期大学, 食物栄養学科, 教授 (60153269)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教員 / 保護者 / 情報開示 / 学校 / 集団 / 服従 / 隠蔽 / 傍観者効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、保護者の情報理解力への信頼感や保護者の学校への態度の認識について、教員を対象に調査研究を行い、直接及び間接的なクレーム体験の頻度が教員の保護者に対する信頼感に影響を及ぼすことを明らかにした(植村・釘原、2017)。 今年度は、教員集団側で情報開示に対して生じる圧力の源泉を明確にするために、看護教員を対象として、ビニエット実験を行った。研究参加者(男性2名、女性26名、平均年齢41.25歳)には、中学校で体罰が疑われる事案が生じたが、中学校長は最初の聞き取り調査で事実が確認できなかったことを理由に、それ以上の調査を行わない決定をしたという状況を提示した。研究参加者には、自身が教頭の立場であったとしたら、1)この後どのような行動をとるか、そして2)その行動をとる際の懸念や心配事を記述することを求めた。その結果、すべての人が校長の指示には従わず、再ヒアリング、他の教員や第三者への相談・報告を行うといった回答が得られた。そうした行動をとることに関する懸念事項としては、上司である校長の指示に従わないこと自体への違和感、組織内での孤立や自身の立場の問題が多く挙げられていた。この結果から、教員組織において情報隠蔽が生じる背景には、組織内のヒエラルキーによる行動統制の強さ、裏返せば多くの人が持つヒエラルキーへの黙従傾向が存在していることがうかがわれた。 また、組織内部での勢力の偏り、上司―部下間での対話の少なさ、経営に対するチェック体制などが情報開示の程度に影響する検討するため、教員を対象としたネット調査を実施し、データの分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
情報開示の抑制に影響する組織要因の概念的な整理とその尺度項目の構成に想定以上に時間が必要になり、一部の調査の実施が最終年度(2018年度)の後半となった。その結果、全体的な研究結果の整理やその発表には、研究期間が不足することになった。そのため、補助事業期間の延長を申請し、承認を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、第1に昨年度の後半に実施した調査データの分析、整理を進め、結果を明らかにする。第2に、これまでに得られた研究結果を総合し、集団的要因が情報開示の抑制に影響する過程についての仮説モデルの構成を行なう。さらに、こうしたモデルに基づき、適切な情報開示を促進することについての考察と提言を行なう。 こうした研究成果を学会等で発表し、社会に還元する。
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Causes of Carryover |
(理由) 旅費及び調査費用が想定額を下回ったことが主たる理由である。 (使用計画) 研究データの検討及び成果発表のための経費として使用することを予定している。
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