2016 Fiscal Year Research-status Report
リーダーの自己概念の変容による多様化がリーダーシップ行動に及ぼす影響
Project/Area Number |
16K04271
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田中 堅一郎 日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 教授 (80212033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 桐子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00235152)
宮入 小夜子 開智国際大学, リベラルアーツ学部, 教授 (10327273)
外島 裕 日本大学, 商学部, 教授 (20297766)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リーダーシップ / 自己概念 / 自己覚知 / 自己複雑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24年~25年度・挑戦的萌芽研究(リーダー・アイデンティティの発達的変容に関する心理学的研究)では、変革型リーダーシップは3つの自己概念の水準(個人水準、関係水準、集合水準)がともに高いときに行われやすく、支援的リーダーシップは関係的自己概念と集合的自己概念の得点が高いときに行われやすかった。さらに、リーダーの個人的自己概念のみが高いときには、侮辱的行為が行われやすかった。この研究の結果は、リーダーの自己概念の個人水準だけが高いリーダーは部下や同僚を罵倒しがちで、リーダーとしての的確な行動はリーダーの自己概念がともに高いことが望まれることを示唆している。しかしながら、この研究ではリーダーの自己概念の水準に関して経時的変化は起こるのか、起こるとすればリーダーの自己概念の水準をどうすれば変えられるかについては検討できなかった。 当該申請研究では、リーダーの自己概念の変容とそれがリーダー行動に及ぼす影響について、以下の目的を設定した:(1)リーダーの自己複雑性を測定する尺度を開発する。(2)これまでの研究成果をもとに、リーダーの自己概念の経時的変容を促すための具体的なリーダー育成研修を試み、その研修効果を検証する。リーダー育成研修は、自分自身のありようを見つめ直す自己覚知を中心に行われる。さらに、(3)リーダーの自己概念の複雑性が進んでいるほど、リーダーとしての的確な行動が促進されるかどうかについてWeb調査を行って検証する。 平成28年度では、(2)のリーダーの自己概念の継時的変化を促すいくつかの企業での人材育成研修において、その研修前後の変化を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<実験的研究> 当該年度においては、職場でリーダーとして仕事する可能性のある従業員、あるいは企業の経営幹部を対象とした、自己概念の変容を促進する目的をもったいくつかの従業員育成プログラムに研究分担者2名が調査の協力を依頼し、それらの研修効果を検証した。研修では、参加者が自分自身を見つめ直すことを主旨とし、360度フィードバック技法を援用しながら、自己覚知を喚起させ、自己の多様なあり方を受容できるように支援した。 研修期間前後で、自己概念の3水準が変化したかについてすでに申請者らが開発した多水準自己概念尺度(LSCS)を用いて測定し、経時的変化を検証した。分析の結果、X社における人材育成プログラムにおいて、自己概念の個人水準の指標が研修後に有意に高まり、関係水準・集合水準の指標も研修後に高くなる傾向を示した。 <文献的研究> リーダー発達に関する心理学的研究についての最新研究論文を調査し、研究動向を俯瞰した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では以下の研究課題を中心に行われる: (1)まず前年度での課題であったリーダーの自己複雑性を測定する指標について、従前の自己複雑性の測定指標が回答者を社会人とした場合でも信頼性が担保できるかどうかについて、予備調査を実施して検証する。 (2)平成28年度に引き続きリーダーの自己概念の変容を促進するための研修効果についての研究を継続する。 (3)予備調査の結果をもとに、様々な職位を対象としたWeb調査を行って、自己複雑性がリーダー行動に及ぼす影響について検証する。自己複雑性が高いほど(認知されている)自己側面の数が多く、自己側面が互いに分化しているだろう。リーダー行動の測定には、神谷(2011)による日本語版変革型リーダーシップ測定尺度(MLQ)、サーバント・リーダーシップを測定する尺度)を用いる予定である。Web調査は豊富なリソースをもつ調査専門会社に依頼し、回答者は800名を目安とする。 (4)平成28年度までの研究成果を日本応用心理学会第84回大会と経営行動科学学会第20回年次大会で発表する。 (5)リーダー発達に関する心理学的研究の最新動向を調査し、今年末までを目標に、展望論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
研究代表者と研究分担者が購入予定であった統計解析用のソフトの一部がまだ未納入であること。Websiteによる調査がまだ行われていないこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度中に購入予定の統計解析用ソフトウェアをできるだけ早急に購入する。
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Research Products
(1 results)