2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K04278
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
村上 史朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (30397088)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 記述的規範 / 規範認知 / 社会心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究では、下記の2つの観点から研究を推進した。 <調査研究> 記述的規範認知が異なる規範に般化した効果を持つかについて、複数の解釈フレームの顕現性を実験的に操作することによって検討を目指した。特定の行動について記述的規範の情報が得られない場合、類似の行動についての記述的規範を手がかりとして用いることが考えられる。この際、類似性を判断する参照情報として、解釈フレームの顕現性を操作する計画であった。上記の調査で取り上げる規範を定めるため、複数の規範の関連性および解釈フレームの効果を測定する予備研究を実施した。その結果、規範間の関連性認知、解釈フレームの操作の効果ともに個人差が大きく、回答者によって捉え方が大きく異なっていた。そのため、条件操作を伴う社会調査を実施することができず、計画の見直しが必要となった。 <実験研究> 記述的規範認知の自動性についての実験的検討を計画していたが、計画段階で下記に示す新たな研究案が浮上し、計画を一部変更して実験を行った。前年度までの研究において、行為の観察容易性の主観的測定に限界があることが示されたが、これらは「他者の行為」の観察容易性を扱っていた。しかし、「自身の行為」が他者から観察可能かについての認知は主観的なものであるため、検討が可能である。行為の観察容易性に関する検討を掘り下げるため、自身の行為が人前で行われた場合と周囲に人がいない場合に行われた場合をそれぞれ想起させ、その心理的インパクトを検討する実験を実施した。自身の行為が他者から観察可能と意識している場合、リスク回避の観点から記述的規範に沿った行為を行いやすいと想定される。ここでは、前提の確認として観察可能性の心理的影響について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で記した通り、調査法を用いた検討が想定通りに機能しないことが明らかになった。そのため、当初平成30年度に計画していた調査を、異なる操作に変更した上で次年度に実施する予定である。また、引き続き検討しても操作が想定通りに機能しない可能性もあるため、異なる要因のデザインに切り替えることも考慮する必要がある。具体的には、後述の「今後の研究の推進法策」で示すような代替の研究案を用意している。一方、実験研究に関しては当初の計画から一部変更したものの順調にデータ収集が行えた。具体的には、平成29年度までの研究で主に検討していた「行為の観察可能性」の概念について、行為者側からの検討を追加することができた。 上記を総合し、計画全体としては「やや遅れている」と評価した。ただし、当初計画の段階で、調査が予定通り進展しなかった場合でも最終年度にフォローアップできるように考慮しているため、期間全体の計画について重大な遅れが発生しているわけではない。
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Strategy for Future Research Activity |
〇記述的規範の解釈フレームの顕現性について 平成30年度研究で、記述的規範の類似性認知について予備研究の段階で個人差が大きく、本調査まで至ることができなかった。この点について引き続き適切な材料を検討する。また、このアプローチが予定通り進行しない場合を考慮して、平行して異なるアプローチでの検討も模索する。具体的には、Liberman, Samuels, & Ross (2004) で検討されていた、囚人のジレンマゲームにおける「ゲーム名」の効果を援用する形式の実験研究を考えている。 〇記述的規範認知の自動性について 平成30年度研究では、自動性について当初計画とは異なる検討(行為の観察可能性に関する自動的反応の検討)を行った。最終年度では、当初計画で予定していた、認知的負荷を操作する手法によって、記述的規範認知の自動性について実験的研究を行う。記述的規範認知は行為の適切さの基準を提供すると考えられるが、これは常に意識されている統制的なプロセスだけではなく、自動的に機能する部分があると考えられる。認知的負荷の低い、統制的なプロセスが働きうる場面では、記述的規範認知だけではなく価値観や態度など、様々な要因を参照するため、記述的規範認知の効果は相対的に低いと考えられる。一方、認知的負荷が高いなど、自動的な認知過程の効果が強く出る状況では、記述的規範認知の行動や判断への効果は相対的に強くなると考えられる。
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Causes of Carryover |
(理由) 「現在までの進捗状況」に記載した通り、平成30年度調査計画の再検討に伴い、調査が翌年度にずれ込んだため、調査費用を執行できなかったことが主な要因である。 (使用計画)上述の調査計画に加え、当初予定の実験研究および、新たに計画に追加された実験研究に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)