2016 Fiscal Year Research-status Report
授業の理解過程における知識操作の機能とその促進条件に関する研究
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16K04287
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
工藤 与志文 東北大学, 教育学研究科, 教授 (20231293)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 理科 / 授業研究 / 知識操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、小学校の現職教員との共同研究体制を構築し、小3理科「ものの重さ」の授業について、教科書をベースに独自のプランを作成し、実践した。さらに、学習者の事前状態、授業後の評価テストの結果を分析するとともに、アブダクションの手法を用い、得られた評価テストの結果から、そのような結果が生じた原因と思われる点を授業過程にさかのぼって検討した。特に「代理的知識操作」に着目し、知識操作の様相と授業理解との関連を分析した。その結果、評価テストの水準は期待されたほど高くなかった。さらに、授業過程における重さの保存ルール(物の出入りがなければ重さは変わらない)の操作の出現頻度を分析したところ、「裏操作」「対偶操作」が頻繁に出現するのに対し、「逆操作」は全く見られなかった。このような操作タイプの偏りは、むしろ保存ルールの裏命題(物の出入りがあれば重さは変わる)の方を積極的に活用したことを意味しており、重さの保存性理解という観点からは問題がある。このことが結果的に、授業の理解に影響した点が考えられる。このように、本研究によって授業過程における教師の代理的知識操作の出現パターンと学習者の授業理解との間に関連がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった、代理的知識操作の様相と授業理解との関連性を示唆する具体的な事実が得られ、次の研究につながる課題を見出すことかできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回確認された、授業過程における代理的知識操作のタイプの偏りが授業理解に影響する事例をさらに追求するとともに、このような偏りと授業者の教材解釈との関連について、さらに検討を加える。
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Causes of Carryover |
現職教員の協力を得るのが予想以上に困難であり、もともと想定していた規模の研究体制を十分に構築できなかったため。また、謝金の支出を予定していた作業を、研究者自身で行うことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進展に伴い、情報収集等の費用がさらに必要になるため、その点に次年度使用額を使用する計画である。
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