2018 Fiscal Year Research-status Report
協同的な推敲におけるピアの実在性の役割とその影響過程の解明
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16K04288
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
深谷 優子 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (00374877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 洋子 千葉工業大学, 創造工学部, 助教 (70406651)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 推敲 / 協同 / 作文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,複数の書き手がお互いの書いた文章を読んでコメントし合うピアレビュー方式(peer-review style)の活動(協同的な推敲)を行う際に,書き手とピアとが時間および対話の空間を共有する距離にいること(物理的実在性)が推敲過程および推敲した文章にどのような影響を及ぼしているのか,またピアの物理的実在性と書き手が心的に表象するピアの存在(心理的実在性)など書き手の認識とがどのように関連するのか,ピアの実在性が協同的な推敲においてもつ役割とその影響過程とについて解明することを目的としている。 平成30年度は,前年度までの研究成果を踏まえ,物理的実在型ピアレビューにおいて,書き手としての思考態度(mindset)の変化にピアの実在性がどのようにかかわるのかを論考した。継続したピアレビュー活動の前後に行った調査結果より,ピアレビュー活動は推敲や推敲後の文章に直接影響を与えるだけでなく,書き手としての思考態度の涵養にもつながっていることが示唆された。例えば,読み経験が豊富な参加者は,読み手を想定した小論作成や推敲についての自由記述は事前事後ともに少ないが,事後の記述では書き手としての思考態度をより体系的に言語化していた一方,読み経験が豊富でない参加者は,読み手を想定した自由記述が事後に増え,書き手としての思考態度が形成されつつある様子がうかがえた。 このほかに,ピアが必ずしも同じ空間と時間とを共有しない状態でのピアレビュー活動を行い,事前事後の調査も実施した。このデータの分析は平成31年度に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピアおよびピアレビュー活動がもつ文章や推敲への直接的な効果だけでなく,参加者の書き手としての思考態度にも効果をもつことが一定程度確認できた。また,ピアが必ずしも同じ空間と時間とを共有しない状態でのピアレビュー活動を行い,事前事後の調査データも収集できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,前年度に収集した,ピアが必ずしも同じ空間と時間とを共有しない状態でのピアレビュー活動および事前事後の調査のデータを分析する。その結果と,前年度までに得られた従来の物理的実在型のピアレビュー活動での知見とを比較することで,ピアの実在性/心理的実在性を参加者はどう認識しているのかを検討する。 以上と,これまでの研究成果を踏まえ,ピアが物理的に不在であっても参加者にとって心理的実在性をもちうるための要件について調べるために,ピアの物理的実在と参加者にとっての心理的実在性とを操作したピアレビュー活動についての調査を行う。これにより,心的に表象されるピアの存在(心理的実在性)がどのように保障可能なのか,またその役割や影響の様相についてさらに精緻化および体系化を試みる。
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Causes of Carryover |
2018年度に実施した研究データの分析が中途であり,次年度使用額が生じた。翌年度行う分析の続きおよびデータ収集のために使用する予定である。
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