2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04294
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
工藤 浩二 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90748138)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自己分化度尺度 / 妥当性 / 再検査信頼性 / 自己分化度仮説 / 発達的変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度作成した自己分化度尺度(以下,DSS-2D)の妥当性と再検査信頼性について検討した。妥当性については,対人関係的側面および個人の内面的側面のそれぞれについて検討した。対人関係的側面については,本来感尺度(伊藤・小玉,2005)を用い,個人の内面的側面については,認知的熟慮性―衝動性尺度(滝聞・坂元,1991)を用いた。大学生を対象として,再検査信頼性の検討も兼ねて2回の調査を実施した結果,本来感尺度および認知的熟慮性―衝動性尺度との尺度得点間にそれぞれ理論的に予想された符号で有意な相関が確認された。これによりDSS-2Dの妥当性が対人関係的側面および個人の内面的側面の両面において確認された。また,T1時およびT2時におけるDSS-2D得点の相関を求めたところ,全ての下位尺度において有意な正の相関が確認された。これにより,DSS-2Dの再検査信頼性が確認された。以上により,このDSS-2Dが今後の使用に耐えうる信頼性および妥当性を備えていることが示された。 次いで,自己分化度の年代別プロフィール作成を目的をとして,web調査を実施した。その結果,DSS-2Dの全下位尺度得点において,青年期から高齢期にかけて自己分化度が高まることが示された。一部の下位尺度においては,10代から青年期にかけて一時的に自己分化度の低下がみられた。これまで,自己分化度は発達的に変化するものとされてきたが,本研究によってそのことが初めて実証されたといえる。また,青年期にかけて自己分化度が一時的に低下することから,青年期の不適応状態について自己分化度の発達的変化から説明可能であることが示唆された。 最後に,大学生を対象とした調査を行い,自己分化度の高群と低群における日本版GHQ28(中川・大坊,1985)尺度得点を比較したところ,自己分化度低群は高群よりも不適応状態を呈していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
再検査信頼性検討のために,調査協力者の対応が確認できる形で2回の調査を設定したが,その実施日の設定が円滑に進められず,結果的に調査の実施が当初の予定よりも遅れてしまったため。 また,Web調査については,学内の倫理審査委員会の承認取得のための準備に当初の予定よりも時間がかかってしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に実施した自己分化度の年代別プロフィール作成および自己分化度仮説の妥当性検証についてはまだ分析が完了していないため,まずはじめにこの残りの分析を行う。 次に,質問紙法および面接法によって,自己分化度を高めるような養育態度を探索する。具他的には,作成した自己分化度尺度を用いた質問紙調査によって自己分化度の高群および低群に分け,その両群を対象に面接法による調査を実施する。面接で,過去の親の養育態度および親子関係に関連したライフイベントなどを聞き取り,自己分化度を高める養育態度を探索的に整理する。 なお,当初の予定では,本研究において作成した自己分化度尺度において,自己分化度仮説を支持しない結果が出た場合,その下位尺度の構成概念について文化的要因の影響を検討する予定であったが,平成29年度に実施した研究において全ての下位尺度で自己分化度仮説を概ね支持する方向での結果が得られているため,文化的要因の影響の検討は行わないこととする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,当初予定にあった学会参加のための旅費をゼロに抑えられたこと,謝金等も大幅に抑えられたことである。なお,学会参加については,当初予定していた発表等が変更となったため,また,積極的に収集したい情報等も少なかったため,参加を見送ることとした。 次年度は,これまでの成果を論文等で発表することが増えると予想されるため,ここで生じた助成金はその論文投稿関連費用に充てる予定である。
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