2017 Fiscal Year Research-status Report
相互作用における意味構成への記号論的アプローチと心理学方法論の再検討
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16K04301
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
小松 孝至 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60324886)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発達心理学 / 文化心理学 / 意味構成 / 自己 / 相互作用分析 / 弁証法 / 記号的媒介 / 社会・文化的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が資料として用いる日常会話や小学校等で実践されるいわゆる日記指導の結果など,子どもが日常的に参加する記号的な意味構成過程と,それを通した自己の明確化において重要と考えられる,弁証法的な対立関係についての考察を進めた。今年度は,こうした対立関係をもたらすものとして,日常生活の中の「再会構造」(reunion)の重要性に着目し,それが「可視・不可視」および「同一・非同一」という,これまで研究でまとめてきた対立的関係といかに結びついているかについて考察した。その際,私たちが日常的に接する様々な音楽がこうした「再会」を軸に構成されていることに着目し,音楽史的な観点を補助的に用いながら考察を深めた。このことによって,私たちの生活の構造が,意味構成をいわば「引き出す」形で成立していることを提案した。この検討結果の概略をまとめたうえでこれまで継続的に助言を得ているJaan Valsiner教授(デンマーク,Aalborg大学)を訪問し,教授のセミナーで発表した。また,その内容をもとに,教授から今後の理論的展開について助言を得た。 弁証法的な対立関係の意義をめぐる前年度までの検討結果については,その展開可能性について,8月に実施された国際理論心理学会の大会において発表を行い,国外の諸研究者からのコメントを得た。同学会では,子どもの発達をめぐる文化心理学的アプローチの現状について資料収集を実施した。 これらの検討結果をふまえ,本課題の展開のために申請した,科学研究費助成事業・国際共同研究加速基金により,2018年3月よりデンマーク,Aalborg大学への長期出張を開始した。この滞在を通して理論的まとめを図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に健康上の理由により生じた遅れのため,研究の進展に若干の遅れが継続している。今年度,本研究の展開において目的の1つとなる心理学方法論全般についての考察については,十分進めることができなかったため,上記の判断とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度3月より,本課題の展開のために申請した,科学研究費助成事業・国際共同研究加速基金により,デンマーク Aalborg大学への長期出張を開始した(2018年9月までの予定)。本課題において継続的に助言を受けている同大学のJaan Valsiner教授との共同作業を通して,本課題での考察をまとめ,さらに,当初計画にあったように,より一般的な心理学方法論の再検討としてモデル構成を試みる。このことを通して,今年度の取り組みに遅れが続いた点についても考察が深められるものと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度の研究を実施した結果生じた若干の残額であり,来年度の研究経費と合算し使用する予定である。
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