2018 Fiscal Year Research-status Report
相互作用における意味構成への記号論的アプローチと心理学方法論の再検討
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16K04301
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
小松 孝至 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60324886)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発達心理学 / 文化心理学 / 自己 / 意味構成 / 心理学研究法 / 質的方法 / 社会・文化的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題については,その内容を一層発展させるため,国際共同研究加速基金「記号論的アプローチに基づく意味構成過程のモデル構築」を申請して認められ,オールボー大学(デンマーク)に2018年3月より2018年9月まで滞在し,Jaan Valsiner教授との共同研究を実施した。その結果得られた意味構成過程に関する理論的なモデルは,著書(英文モノグラフ)としてまとめられており,2019年7月に発刊される予定である。 この理論モデルは,本課題において過年度に検討してきた結果(例:会話など日常の意味構成における,生活中の再会(reunion)の意義)も取り込んでいる。また,本課題で対象としてきた意味構成と自己の明確化の過程における他者性の役割や,弁証法的なダイナミクス(特に「可視-不可視」「同一-非同一」)の重要性に関する考察も含まれる。さらに,従来の心理学研究が十分配慮してこなかった観察者(研究者)の位置づけも明示されるとともに,心的活動が文脈・環境の中にある様々な構造と不可分の形で成立していることを明確化した。 以上の内容を含むこのモデルは,子どもの生活の中での意味構成(会話の記録・日記)の分析をベースとしつつも,自己に関する研究を中心に心理学の諸アプローチを整理し,幅広い方法論(例:質問紙調査・インタビュー)に対して統合的に適用できるものである。これらにより,本課題が目的としてきた「意味」のなりたちに関する理解を深めるとともに,心理学の方法論に対して一定の示唆を与える結果が得られたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は,のちの国際共同研究加速基金の交付を想定せずに開始されたため,2018年度までの研究計画として申請されていた。その後,上記基金によりValsiner教授との共同研究が可能になったため,それを通してさらに研究を発展させ,上で述べたように,所期の目的を含む研究のまとめがなされている。従って,上記の進捗状況と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
国際共同研究加速基金による長期出張での研究成果をふまえ,研究方法論に関する考察,特に,研究プロセスにおける研究者自身の位置づけ・役割をめぐる検討を深め,心理学方法論に対する提言をまとめることを検討している。 また,上記長期出張における研究交流の結果,自己の発達と制度的環境(学校等)をテーマとした国際的論文集を編集することとなり,出版準備を進めている。
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Causes of Carryover |
本研究課題を基課題として申請した平成28年度国際共同研究加速基金(平成31年度まで)により,平成30年3月より同9月まで,デンマーク王国オールボー大学でJaan Valsiner教授との共同研究を実施した。平成30年度は同共同研究を中心に実施したため,次年度使用額が生じた。
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