2018 Fiscal Year Research-status Report
「第2の精神年齢」を測定する ーワーキングメモリ検査としての乱数生成課題―
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16K04312
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
板垣 文彦 亜細亜大学, 経営学部, 教授 (10203077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 玄 亜細亜大学, 経営学部, 教授 (60322658) [Withdrawn]
亀田 弘之 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (00194994)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ワーキングメモリ / 乱数生成課題 / ステレオタイプ / 実行系機能 / エピソードバッファ / 線分2等分課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年にはワーキングメモリ課題である乱数生成課題に関して大学生の年齢差を反映する思考機能の評価軸の作成を試みた。その年齢軸構造が不安定であったことから、2017年には大学生の年齢水準に伴って高まる自我同一性評価との関係を検討した結果、自我同一性評価の高さは、発達に従って減少すると予想されていた自然数列のステレオタイプ反応の増加傾向に関連していた。2018年の実験はこの予想に反する結果を支持するものであったことから、この結果をどのように解釈するかについて理論的な検討を行った。その結果、自然数列の生成は、これまでも短期記憶から消え去った数表象を効率良く活性化させ、新しい数表象を「更新」する音声方略として解釈してきたが、「更新」機能は、「禁止」、「変更」機能よりも、知能のg因子と関連の高い実行系機能であることが報告されており (Friedman et al. 2006)、その更新機能の優勢さとして解釈する。これによりこれまでのワーキングメモリ課題としての乱数生成課題モデルには変更は生じない。 また、この自然数系列による音声特性を利用した生成方略のステレオタイプ化を抑制する方略として、数表象の視空間特性を用いた方略が仮定されていたが、線分2等分課題の変形課題によって、その方略の構造を確認する実験を行った。この課題には、男女差が顕著なことが分かっており、現在、男性参加者の分析結果では、同数反復傾向が関係している事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、実験室移転のため実験ができなかったため、十分なデータを収集する事ができなかった。そのため、取得できた小数のデータと過去のデータから得られた予想外の結果をどのように解釈するかについての検討を中心に研究を行なった。 また、実験室での実験ができない場合でも、インターネットにより音声認識で乱数生成課題アプリを利用する予定でいたが、生成個数を163個に固定した実施法で数系列の長さを安定させることが難しいことが分かり、生成時間を固定する実施法に切り替えることに変更した。この変更のために、時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、改めて乱数生成課題に関して基本的なワーキングメモリの分析法を利用できることを確認した。また、自然数生成を抑制する傾向が年齢とともに高まるのではなく、そのピークが大学生ではなく高校生の年齢層のどこかにあることが予想されることから、このピークの特定のために高校生のデータ収集を行う。また、同じように自我同一性評価が高まるほど自然数系列生成傾向が高まるという相関傾向が見いだされているが、自我同一性の下位評価(連続性、対自的、対他的、心理社会的)に対応する評価軸構造が見いだせるかどうかについて評価軸の構成を試みる。 また、自然数の生成傾向の抑制に関連すると考えられる視空間特性の評価軸を特定し、高校生と大学生の違いについてその変化を検討する。 これまでの研究計画では、乱数生成課題遂行時に2chの近赤外線トポグラフィ(NIRS)による前頭葉の半球機能差の検討を行う予定でいたが、自然数系列の生成傾向に関する評価の変化についての分析は過去に52chNIRSによって活性部位を特定していることから、過去の研究知見と合わせた考察に切り替え、理論的な側面から検討を行うように研究方針を変更する。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、実験室移転のため実験時間がとれなかったこと、ならびに平成29年度に仮説と異なる結果が生じたことから、新たな仮説の修正のための理論構成に時間をとられたことで、実験室を利用しないインターネット実験の方法も中断した。その代わり、新たな仮説に基づく実験プログラムを用意した。次年度に向けては実験室実験の謝金と実験と学会発表の旅費を中心に助成金を利用する予定である。
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