2016 Fiscal Year Research-status Report
幼児は相手の視点を取ってことばの意味の推測を行うか:教示行動からの検討
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16K04318
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
小林 春美 東京電機大学, 理工学部, 教授 (60333530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 恵子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (80326991)
高田 栄子 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20236227)
安田 哲也 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 有期助手 (90727413)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 他者視点 / ことばの意味推測 / 指さし / ジェスチャー / 言語発達 / 部分名称 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児は相手の視点をとって、ことばの意味理解や他者への教示行動を行うかについて調べることが、本研究の目的である。大人がある指示行為とともに提示する言語の意味を子どもが知るためには、その教示行動をしている大人の視点に立って教示内容を推測することが必要である。他者視点取得(perspective taking)を利用した指示意図推測プロセスが教示行為に寄与するという仮説の基に、子ども自身による教示行動の発達過程を明らかにすることを目指す。平成28年度では、定型発達幼児と高機能自閉症児(小学生)および比較のため大学生を対象とする教示行動理解・産出の2つの実験を行なった。 定型発達児では、プラスチック製の動物(ゾウ、ウマなど)のフィギュアを用いた、体の部分に関する名称(足、ひずめなど)の理解・産出と、ボルト・ナットなどを用いた見慣れない事物の部分名称理解について調べた。2歳でも自分がよく知っている部分名称の場合には、ある程度の割合の子どもが、適切な教示行動、たとえば提示したいフィギュアの動物の体の部分を、提示したい相手に対し、部分に接触した指さしをして教えるなどの行動を行えることがわかった。一方、相手の視点をあまり考慮しない場合もあるため、難しさもあることがわかった。 高機能自閉症児では、自転車などの事物を持った動物のぬいぐるみを使用し、事物の部分(例:サドル)に関する実験者の教示行動の理解と、参加者自身による行動産出を調べた。当初の予想とは異なり、他者の視点を考慮して自分の教示行動をある程度うまく調整できる自閉症児もいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度の定型発達児を対象とした実験計画では、「先生はこれを触っています」という明示的な教示に加え、「先生はこれを見ています」という非明示的な教示の効果を調べる予定であったが、前者の実験は行なった一方、後者の実験は行わなかった。明示的教示を行なっても2歳児では理解が困難であったため、今後は2歳児でもわかりやすい明示的教示の性質を解明すべきであることがわかった。自閉症の小学生を対象とした実験では、当初計画よりも実験計画を洗練させ、独自の新たな実験パラダイムによる実験を実施した。ぬいぐるみに事物を持たせるという手法による実験で理解・産出を調べることにより、入れ子構造となった部分-全体関係が理解・産出できるかを調べた。自閉症の小学生は、ある程度高い能力を持っているが、入れ子構造への対処では限界もある可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に明らかとなった、2歳児では明示的な教示行動でも理解しにくい場合があることを踏まえ、2歳児にとってわかりやすい教示行動の性質を明らかにする。具体的には、言語による教示が難しかった可能性を考慮し、言語に加え指さしに動きを加えるなど非言語情報を利用できるかについて調べる実験を行う。さらに、自閉症小学生に対して行なった入れ子構造における教示行動の理解・産出実験を、定型発達の幼児においても実施し、部分-全体関係がより複雑な場合の教示行動の理解・産出について調べる。
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Causes of Carryover |
ASD児における教示行動を予備的に解析したところ、当初の予測とは異なり、他者視点取得を利用したような行為を行なっていた。この知見を精緻化するために、コーディングの方法を検討する必要性が生じた。また、この知見を国際会議で議論するためには、再考察の必要性が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析のコーディング方法を設定し、論文化に向けダブルコーディングを行なう。また、教示行動に関する知見に関して、国際会議に投稿し研究議論を行う。なお、他に関しては研究計画の通りに遂行する。
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Research Products
(4 results)