2017 Fiscal Year Research-status Report
高校初年次生の適応的な説明文読解と支援メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K04325
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山本 博樹 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (30245188)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高校初年次生 / 説明文理解 / 理解支援 / 構造方略 / 学習適応 / 学業達成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的を達成するために,平成29年度は一連の研究における研究2を実行し,高校初年次生の適応的説明文読解に対して構造方略の使用が及ぼす効果の検証を行った。検証では,高校初年次生が説明文を読解する過程の最中でどのように構造方略を使用するかを,PCを用いた評価システムを用いて,読解時の体制化過程の最中を時期ごとに分けて検証した。また,教科を越えた学習適応や学業達成への影響も検討した。高校初年次生では,構造方略の使用傾向が高い者は低い者に比べて,体制化過程の後半での構造方略の使用を介して説明文理解を向上させ,教科を越えた学業達成や学業達成につながるという仮説を構築し,この仮説を検証した。実験の手続きは次の通りであった。 まず,PCの画面上で文配列課題を実施し,体制化過程の最中に出現する構造同定率を求めた。構造同定率は体制化過程の前半と後半に分けて求めた。次に,説明文読解の指標として再生課題を実施し連得点を求めた。課題文として,高校生の理解度が最も低い,公民科教科書に記載された学説史を用いた。また,学習適応と学業達成についても評価させた。 山本・織田(2018)に基づき,構造方略の使用傾向に関して下位群と上位群とを設定し,学業達成に影響する過程をモデル化した。つまり,第1に,構造同定率 (前半) から構造同定率 (後半) へのパスを仮定した。第2に,前半と後半の構造同定率のそれぞれから説明文読解と学習適応へのパスを仮定した。第3に,説明文読解と学習適応のそれぞれから学業達成へのパスを仮定した。なお,第3のパスには等値制約を設けた。 分析結果から,高1では構造方略の使用傾向に応じて構造方略の持続的使用が異なるとともに,それぞれの方略使用が説明文読解や学習適応を規定し,それらを介して学業達成に異なる影響を及ぼすことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の計画を概ね実施することができた点で,上記の自己評価を付した。また,予定した研究目的を実行できた点に,満足している。また,予想外の成果も得られた。それは,説明文読解において体制化過程は時間的な広がりを持つが,その時期ごとに構造方略の使用が異なり,その影響が異なるという新知見である。この点は次年度以降の研究をより進展させると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究が一連の研究の方向性を定めるものとなった。特に,今回,説明文読解における体制化過程の時期ごとに,構造方略のもたらす影響が異なるという点を示すことができた点が大きい。ここから時期に応じた支援の可能性が示唆されるからである。これを踏まえて,30年度以降の研究計画を実施したいと考えている。
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Research Products
(6 results)