2018 Fiscal Year Research-status Report
高校初年次生の適応的な説明文読解と支援メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K04325
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山本 博樹 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (30245188)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 高校初年次生 / 説明文理解 / 理解支援 / 構造方略 / 学習適応 / 学業達成 / 構造方略教示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的を達成するために,平成30年度は研究3を実行し,高校初年次生の適応的説明文読解に対して構造方略への処遇適合型支援がおよぼす効果を検証した。検証では処遇適合型支援として標識化を用いた。高1 (151人) を2群に分け,一方を構造方略教示群とし,他方を非教示群とした。加えて,学習適応性検査の評定値に基づいて,両群で上位群,中位群,下位群を構成した。 教示群と非教示群ともに,標識化無版と標識化有版の2つの説明文を提示し,理解度を7段階で評定させた。また7項目から成る構造方略の使用傾向ならびに5教科 (英,数,国,理,社) の理解度を7段階で評定させた。これを事前テストとした。事前テストの後,教示群には9週間におよぶ構造方略訓練を行った。構造方略訓練は毎週金曜日のSHで1回実施し,説明文の構造を同定させる問題1問を解答させて自己採点した後,その一週間を振り返って構造方略の使用傾向を評価させた。この構造方略訓練の後に,教示群と非教示群ともに事後テストを同様に行わせた。 分析では事前テストから事後テストの評価値を減じた3つの変化量を分析測度として用いた。それらは,構造方略の使用傾向に関する変化量 (方略使用変化,7項目),標識有型と標識無型説明文の理解の変化量 (説明文理解変化),学業達成の変化量 (学業達成変化,5教科)であった。以上の測度を用いてパスモデルを作成しパス解析を実施した。結果から,高1では標識有型説明文の理解度を促しその結果として学業達成が高まるとともに,この標識有型説明文における理解度の向上は特に学習適応性の高い生徒で構造方略教示が構造方略の使用傾向を高めたためであることが示された。ここから,高校初年次生の説明文理解に対して構造方略への処遇適合型支援がおよぼす効果が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度の計画を概ね予定通り実施することができた点で,上記の自己評価を付した。また,得られた結果は仮説に相応する満足なものであった。また得られた結果には,学習適応性により構造方略教示の効果受給が異なるという先行研究とは異なる結果も得られたが,これは新たな成果である。よって31年度においては,学習適応性レベルという新たな要因を組み込んで,予定どおり構造方略教示 (適性形成型支援) の効果検証を引き継き行う予定である。さらに興味深い結果が得られることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回の研究により,一連の研究が大きく飛躍することになった。つまり,高1に対する処遇適合型支援の効果が,構造方略教示という適性形成型支援により影響を受けるというメカニズムが示されたからである。これにより,31年度においてはもとより研究4として適性形成型支援の効果を検証する予定であったが,本年度の結果を踏まえてより高度な仮説を構築し,予定した研究計画を実施したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
入学直後の高校初年次生に対するデータ収集は予定通り順調に遂行できており、次年度 (2019年度)も高校入学直後という期間を逃さず、速やかなデータ収集を図る計画である。ただ当初計画のデータ収集プログラムは協力校の情報環境との間に不整合がみられ、PC一台ごとのインストールに莫大な時間がかかることが判明した。入学直後に過密スケジュールをこなさねばならない協力校の現状を考えると、さらに多忙に追い込む状況が生じた。これを回避するために、現行のプログラムを修正したいと考えた。このために2019年度が始まる前にプログラムを一部修正し、実施に向けて準備を整えた。 今回次年度使用額が生じたが、もとより次年度 (2019年度) の予算案の中に予め「プログラム修正委託費」を含めていた。これは、前年度である2018年度のデータ収集の状況を鑑みて、プログラムの不具合を調整し改善するための費用であった。これを2019年度に入ってから利用する計画であったが、上記で述べた事態が速やかに把握できた次第である。要するに、2019年度の「プログラム修正委託費」をその修正・準備のために前年度に使うことはまさに計画通りの執行とも言える。むしろ、これにより2019年度の計画をより円滑に達成するための準備が十分にできたと言える。
|
Research Products
(9 results)