2019 Fiscal Year Annual Research Report
The evaluation and manipulating about irrational behaviors in self-regulated learning
Project/Area Number |
16K04333
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
野上 俊一 中村学園大学, 教育学部, 准教授 (30432826)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自己調整 / 意思決定 / 努力調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,自己調整学習における非合理的な行動を期限が設定された課題を用いた心理学実験により検討することであった。自己調整学習がうまく進まない理由をこれまで実施されてきたパーソナリティ的分析だけでなく,認知過程の分析を行うことが本研究の独自性であった。本研究で対象とした自己調整学習における非合理的な行動は「課題取り組みへの先延ばし」であり,単に先延ばしを決断するか否かを問題にするのではなく,取り組んでいない状態から取り組む状態へ変化する臨界点での心的過程に注目した。 令和元年度は平成30年度に実施できなかった追加的実証研究と補足的な追加調査を行った。多重課題パラダイムを用いて,行動の臨界を引き起こす原理をプロスペクト理論の参照点と価値関数によって構成される認知過程モデルの妥当性を検証した。平成30年度の実験結果を踏まえて,課題に対する事前知識を獲得させるための練習試行の導入や課題に取り組んでいる途中での外乱の挿入などを設定したが,平成30年度と同様に明確な課題の先延ばしは生じず,課題遂行に対する難易度評定に基づく順次遂行が示された。 この結果を踏まえ,日常的な文脈での課題先延ばしに関する質問紙および面接を用いた調査により,先延ばし時および先延ばしを止めて取り組む臨界時の認知過程について検討した。その結果,学業課題における先延ばしはそれまでの課題経験に強く依存していることが示され,臨界点は経験則としての自己理論に従っていた。締め切り直前に臨界点を置く対象者の多くが集中力や意欲を高めるために意図的な遅延を方略的に使用していた。 研究期間を通して,課題の先延ばしとそれに伴う先延ばし中止(課題再開)の認知過程には対象者のそれまでの経験知に基づいて予定された先延ばしという側面が示唆された。また,パーソナリティ変数や認知的抑制機能と高い相関は示されなかった。
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