2018 Fiscal Year Research-status Report
子どもの妊娠から成人までの長期縦断研究から見る親子の発達
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16K04335
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
岡本 依子 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (00315730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 幸恵 青山学院女子短期大学, 子ども学科, 教授 (50317608)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 親子関係 / 縦断研究 / 生涯発達 / 家族ダイナミクス / 親子の認識の違い |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,子どもの妊娠・出産から,乳幼児期,小学校入学時期を経て,子どもの成人期までの親子の発達過程を生涯発達的視点から追うことを目的としている。新たに追加する成人期のデータ(すなわち,親のインタビュー,子のインタビュー,親子の会話場面観察,および,SCT法による質問紙)については,2017年度すでに得られたので,2018年度は分析の視点を明確にするための数ケースのケーススタディを実施し,学会発表を行った。 まず,20歳時点におけるインタビューから,親子Sのインタビューを取り上げ,それまでの20年間の「難しかったこと」「大変だったこと」を振り返る語りについて検討した。分析から,子が大変だった時期として語った大学受験に費やした2年間について,親は大変だった時期としては語らず、親子の関係が変わった時期として語っており,親子の大変という認識は必ずしも一致しなかった。また,親は,高校までは「大変さ」や「難しさ」を周囲の環境によるものとしてきたが、高校に入って子との意思疎通の難しさを語り,高校卒業後2年の浪人を経て,就職を選んだ子の強い意思に直面して、今まで抱えていた責任を手放したような語りがみれらた。親の説明様式の破綻が見られ,子育てへの”ふっきれ感”と捉えられた。 また,同様に20歳時点のインタビューのケーススタディから,子の語りに現れる家族外コミュニティについても検討した。親子Aは,子が中高一貫校に通いつつ、高校受験を決心するが,このとき,家族との子どもの未来像にとってどのようなコミュニティ(活動の場)を選択することが適切なのかという親子の展望の違いが大きな葛藤の原因になっていた。 2019年度は,以上を踏まえて,家族における大変さや親子の認識の違いを分析の視点として,全ケースについての検討を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、20歳時点におけるインタビュー・データを整理し,2つの分析視点からケーススタディを行い,学会発表(2件)を行った。その一方で,20歳時点の多角的なデータ,および,乳幼児期から児童期のデータについても分析準備を行った。とくに,SCT質問紙の分析のためのテキスト入力や語の整理といった作業,20歳時点でのデータのトランスクリプションの作成と整理を行った。このような作業を踏まえて,研究分担者および研究協力者とともに,分析視点を検討するための打ち合わせ,分析のスキル研修としてのRの研修(SCT質問紙の分析としてテキストマイニングを検討)を行った。 一方,親子観察のデータについては、親子の発話トランスクリプションから、まずは形式的側面から分析を行う予定だったが,トランスクリプションの作成(アルバイト確保の難しさから)が遅れ,分析が予定通り進められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は,前年度に得られたデータを中心にケーススタディを行い,分析の全体的な方向性を検討した。また,データの整理もかなり進んだ。2019年度は,分析をさらに進めたい。とくに,SCT質問紙については,妊娠期,乳幼児期,児童期,および,成人期のデータが確保されており,分析方法にもめどが立っているため,優先して分析したい。この分析から,親が子育ての過程において変化させるであろう生涯発達的な子ども観,親観などが見いだされる。本研究では,それぞれの時期における分析は進んでいるが,全体を見通すような発達的視点が十分ではないため,長期縦断的な分析の立ち位置を明確にしたい。 また,2018年度行ったケーススタディにおける分析視点は有用であった。当該年度は,より多くのデータに適応し,分析を進めたい。分析後には、学会発表、論文執筆を行う。
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Causes of Carryover |
年度内に実施した研修の費用が年度末になり、翌年度の手続きとなったため。また,分析のためのソフト購入を検討しており,他にかける経費を節約した。
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Research Products
(2 results)