2016 Fiscal Year Research-status Report
気晴らしスキルによる再評価プロセスの解明に関する臨床健康心理学的研究
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16K04346
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
及川 恵 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60412095)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 臨床心理学 / 健康心理学 / 気晴らし / 再評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体的な目的は、再評価を促す効果的な気晴らしスキルと下位方略という観点を含めた再評価プロセスを明らかにし、セルフコントロールに役立つ示唆を得ることである。 本年度は、再評価の下位方略の効果に関する検討を行うことを主な課題とした。再評価は抑うつなど否定的感情の低減に役立つ感情制御方略であることが指摘されている。しかしながら、近年では再評価には複数の下位方略があることがわかっており、それぞれの効果を明らかにすることが課題とされている。本年度は再評価の下位方略として、出来事の肯定的な側面に焦点をあてる方略(肯定的再評価)を中心に、距離を置いて客観的に出来事を見る方略や感情を受容する方略等を比較し、各下位方略が感情に及ぼす影響を実験的に検討した。その結果、下位方略の中では肯定的再評価が否定的感情の緩和や肯定的感情の増加に有効であることが示唆された。また、本年度は効果的な気晴らしの特徴について示唆を得るため、対人ストレス場面における気晴らしについて検討した質問紙調査の分析を行った。先行研究では、気晴らしを効果的に行うためには気晴らし時の集中や気晴らし後の肯定的感情の経験が重要であることが示唆されている。調査結果から、気晴らしのタイプとして、対人的な気晴らしが集中と正の関連があること、また、対人的気晴らしが活動的快と、個人的気晴らしは非活動的快や抑うつ気分と正の関連があることが示された。気晴らし時の集中や肯定的感情との関連を踏まえれば、対人的気晴らしの有効性が示唆されるが、対人的気晴らしと個人的気晴らしでは関連する肯定的感情が異なっており、両者を使い分けるようなスキルも重要であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な目的は、再評価の下位方略と肯定的および否定的感情との関連について検討し、下位方略による感情制御の効果の違いについて明らかにすることであった。複数の実験的検討から、再評価の下位方略の中では、共通して肯定的再評価の有効性が示唆された点で、本年度の目的に対応した一定の研究成果が得られたと考えられる。また、次年度には、気晴らし時の集中や肯定的感情と関連する気晴らしの特徴を明らかにすることを課題の一つとしている。調査データの分析から、対人的気晴らしの有効性を示すデータが得られたことにより、次年度の研究にも繋がる示唆が得られたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、横断および縦断調査を行い、効果的に気晴らしを行うためのスキルや気晴らしと再評価との関連について明らかにすることが課題である。前期には日常的なストレス場面における横断調査のデータを分析し、気晴らし時の集中や肯定的感情に関連する気晴らしの特徴を明らかにする。後期には、前期のデータ分析で得られた知見を踏まえ、気晴らしの活用と再評価との関連を検討し、再評価を促す気晴らしの特徴について、縦断調査により明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度はほぼ計画通りの執行状況であったが、未使用額が発生した理由として、謝金については相対的に当初の予定より少ない作業時間数となったことが考えられる。本年度は本課題の初年度であり、次年度以降には謝金の増加も予想されるため、次年度への繰り越しとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、主な予算として、国内外の学会に参加するための旅費を計上している。国内の学会も遠方で開催されるものであるため、当初の予定より旅費の増加が予想される。また、次年度にも、データ整理等の作業の謝金や、成果発表のための英文校閲の費用を要する。本年度に生じた助成金は、次年度の謝金等に使用予定である。
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